Text:Kenichi Aono
Edit:Yusuke Suzuki
ファッションでも音楽でもスポーツでも、どんなジャンルもその人にしか出せないスタイルがある。“Style is Everything”。そう、だれかが言った、スタイルがすべて。『スタイルの履歴書』は、文字通りスタイルのある大人へのインタビュー連載。毎週月・水・金曜更新で、第1回目は〈TUBE〉の斎藤久夫さんをゲストに迎えて。
07. デニム生地の買付けで叩きのめされる。
企画したパンタロンがヒットすると、今度は会社がジーンズを始めるという。岡山で〈BIG JOHN〉がスタートしていたかその少し前だったかという頃です。伊藤忠のニューヨーク駐在員に頼んであるからデニム生地を買いに行けと言われてコーンミルズ社に赴き、14オンスのデニムをいきなりすごいメーター数買ったんです。7万メーターくらいだったかな。なにしろ何万本分の生地が必要だったので。このときは西海岸にも行って、そっちではプリントとかストライプとかチャラチャラした柄の生地を手配しました。
アメリカで買う生地は、俺がいた会社の感覚からするとはるかに高いんです。また、買うには買うんだけどその場で即決ではなく1度東京に帰って上に確認してから返答したかった。それで安くならないかというのと、1度持ち帰るという話をしたところ、先方から「ミスター・サイトウ、君は会社を代表して買いに来ているんだろ? 君が決済すべきだ。我々はファッションに付加価値をつけていかに高く売っていくかを考えなければならないのに、安くしろとはどういうことだ」と返ってきた。その通りだよね。向こうからしたら「お前、何しに来たんだ」と思って当然。商社の人がいろいろ言い訳をしてくれましたが俺は反論する言葉もなかった。思いっきり叩きのめされましたね。自分ではイタリアだのフランスだのの高い服を買っていながら、全然わかっていなかったなぁと。
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1980年代初頭に活躍し、伝説のクリエイティブ集団として知られる“バッファロー”のスタイリストであるレイ・ペトリとの仕事も。
Profile
斎藤久夫(チューブ・デザイナー)
1945年、東京都本郷出身。自身のブランドである〈チューブ(TUBE)〉のデザイナーであり、大手セレクトショップやブランドのアドバイザリー、ディレクター業務を歴任。