スタイルの履歴書。岡本博 #10

Text: Kenichi Aono

Edit: Yusuke Suzuki

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ファッションでも音楽でもスポーツでも、どんなジャンルもその人にしか出せないスタイルがある。“Style is Everything”。そう、だれかが言った、スタイルがすべて。『スタイルの履歴書』は、文字通りスタイルのある大人へのインタビュー連載。毎週月・水・金曜更新で、第11回目はトイズマッコイの創設者として知られる岡本博さんをゲストに迎えました。7月の全13回、ぜひお付き合いください。

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10. フライトジャケットへの情熱がついにものづくりに至る。

 アメリカで調達してきたアイテムは、自分で着る以外には友人知人で欲しいというひとにほぼ原価で譲っていましたが、あくまでも本業はイラストレーターでした。1984年あたりからは作品づくりにコンピューターを導入していきます。使いはじめた理由は楽できると思ったから(笑)。『FM STATION』の「アーチスト名鑑」という連載はコンピューターで描いていました。でも数年で飽きてしまってまた手描きに戻りましたね。

 そんな感じでイラストレーターをやりながらも、アメリカのフライトジャケットへの情熱は変わらず持ち続けていたんです。あるとき、石川次郎さんに「年代ものの革ジャンはやがて壊れてしまうから、ずっと着られるようなちゃんとしたものがほしいよね」なんて話したら「じゃあつくったらいいじゃん。本当につくったら誌面で大々的に宣伝してやるよ」と返ってきた。このやりとりをしたのが1987年で、なんとかつくり『POPEYE』に掲載されたのが1988年10月5日号。ディテールや素材など語ることがあるからという理由でモノクロ4ページにしてもらいました。

 このときつくった「A-2」モデルは、できるかぎり本物に忠実なものにしたかったのですが、こっちは服づくりに関してはまったくの素人。それなので本当に手探りで進めていったんです。でも、これがものづくりの世界に入って納得のいく仕事をしていく大きなきっかけになったのは間違いありません。

  • 本文中にある『POPEYE』の1988年10月5日号に掲載された中面ページ。“A-2よりはるかにA-2 このこだわり。”の見出しとともに、細かなディテールの解説が紹介されています。

    本文中にある『POPEYE』の1988年10月5日号に掲載された中面ページ。“A-2よりはるかにA-2 このこだわり。”の見出しとともに、細かなディテールの解説が紹介されています。

  • 『POPEYE』の1988年10月5日号の特集は“ニューリッチ研究 これは無理してもほしい!”というタイトルで。

    『POPEYE』の1988年10月5日号の特集は“ニューリッチ研究 これは無理してもほしい!”というタイトルで。

Profile

岡本博(トイズマッコイ 会長)

1953年、愛知県名古屋市生まれ。イラストレーターとしてキャリアをスタートし、1996年にミリタリーやモーターサイクルをベースとしたアパレルブランドの〈トイズマッコイ(TOYS McCOY)〉を設立。生粋のスティーブ・マックイーン好き&モーターサイクル乗りとしても知られ、〈ハーレー ダヴィッドソン(HARLEY DAVIDSON)〉や〈トライアンフ(TRIUMPH)〉のヴィンテージバイクでレース参戦も。現在は〈トイズマッコイ〉」の会長として、ものづくりと向き合う日々を送っています。

ホームページ http://www.toys-mccoy.com