Good Watch, Good Style - 時計と服のいいカンケイ。Vol.04 Breguet Type 20 2057
一年も終わりに差し掛かる頃、毎年発表されるのが「新語・流行語大賞」だ。その年の世相を表す30の言葉がノミネートされ、選考委員がトップテンと大賞を選ぶ。今年の代表的なワードを挙げると、大谷翔平選手の記録を指す「50-50」、ドラマ『地面師たち』のセリフ「もうええでしょう」、猫のショート動画「猫ミーム」など、知っているものもあれば、はじめて聞くものもあったりするからおもしろい。
そのなかで目立ったのが、「初老ジャパン」「ブレイキン」「名言が残せなかった」の「パリオリンピック」にまつわるものだ。この大会で日本は金メダルを20個獲得、メダル総数は45個を記録し、どちらも海外で開かれた夏季の大会では過去最多だった。
「パリオリンピック」を振り返ると、さまざまな名場面があるが、そのひとつはビーチバレーの女子決勝、ブラジル対カナダだろう。試合の終盤、両国の選手たちがネット越しに口論をはじめ、一触即発の事態に。その時、会場に流れたのがジョン・レノンの曲「イマジン」だった。これを観客が合唱したことで、選手たちの険しい表情は笑顔に。熱戦のなかで起こったいざこざを音楽が解決するという意外なシーンだった。
そんなパリ大会もこれが二回目の開催で、初回はいまから100年前に行われた。
1920年代のフランスは第一次世界大戦からの復興が進んでいた時期で、ファッション界ではココ・シャネルが活躍。彼女は21年に香水「シャネル N°5」を、その数年後に “シャネル・フォード” と呼ばれた黒のドレス「プティット・ローブ・ノワール」を発表している。
この時代、フランスの航空分野を支えたのが〈ブレゲ(Breguet)〉のクロノグラフだった。当時〈ブレゲ〉はパイロットウォッチに加え、創業者のひ孫が設立した「ルイ・ブレゲ航空」に向けた、飛行機の計器パネル用の時計機器をつくっていた。機能性と実用性に秀でた製品は特にフランスで評判だったという。
そんな状況を経て、〈ブレゲ〉はフランス空軍から声が掛かり、55年に「タイプ XX」を完成させる。軍が求めたのは、フライバックの機能付きのクロノグラフ。それは回転ベゼルと夜光のブラックダイヤルで、気圧や加速度の変化に耐えられるムーブメントを備えたもの。
実はこの「タイプ XX」の名付け親は〈ブレゲ〉ではなく「フランス航空省」だという。当時、いくつかのウォッチメーカーと軍が契約したため、複数のブランドから「タイプ XX」なる時計が登場した。しかも、そのブランド各社は顧客に同じ機能を持つ時計を販売したため、「タイプ XX」には軍用モデルと民間用モデルが存在するから少しややこしい(笑)。
〈アナトミカ〉ニット ¥39,600、パンツ ¥48,400(すべてアナトミカ 東京)、その他 編集部私物
〈サロモン〉ブーツ「SNOWCLOG MID」 ¥23,100(サロモン コールセンター)
当連載で取り上げたのは1,100本つくられた、軍用モデルの第一世代をモチーフにしている。その名前にはローマ数字で “XX” と表記される通常モデルとは異なり、アラビア数字の “20” が用いられた。
フェイスの特徴は、3時の位置にある30分積算計が9時の位置のスモールセコンドより大きく、4時と5時の間に日付の窓が付くところ。これだけ聞くと突飛なデザインのように感じるが、よく見るとその表情は極めて端正だ。
そして、搭載された自社製の自動巻ムーブメントは、キャリバー7281。これは開発に4年費やしたという代物で、ひげゼンマイをはじめとする一部のパーツはシリコン製。腐食や摩耗に強く、磁力の影響を受けないため、時計の精度を向上させた。
この一本は付属するNATOストラップを使えば、クラシックなカジュアルスタイルにも、モダンなブーツにもよく馴染む。
気づくと〈ブレゲ〉のアイコンウォッチは来年で誕生から70年。その活躍の場はいまフランスの空から世界へと広がっている。
ケース : ステンレススティール、42 mm
厚さ : 14.1 mm
パワーリザーブ:60時間
価格 : ¥2,882,000
電話:03-6254-7211
オフィシャルサイト
電話:03-5823-6186
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電話:03-6825-2134
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