高橋ラムダのスタイルコード。
Vol.2 トレンチコート

高橋ラムダのスタイルコード。<br>Vol.2 トレンチコート 高橋ラムダのスタイルコード。<br>Vol.2 トレンチコート

Photo: Haruto Inomata

Edit: Soma Takeda

COLUMNFASHION

スタイルとは、ただ服をおしゃれに着こなすことではない。服そのものが持つ歴史や文化、そしてそこに流れる時代の空気を知り、自分なりに咀嚼してこそ、はじめて形づくられるもの。本連載では、スタイリスト・高橋ラムダの私物とその着こなしを手がかりに、スタイルの背景を紐解いていく。第2回目のテーマは、トレンチコート。

伝統を破るパンクの精神性。

フイナム
フイナム

ラムダさんがトレンチコートを意識するようになったきっかけってあるんですか?

ラムダ
ラムダ

1983年の『THE FACE』に載っていた、マルコム・マクラーレンの格好(気になる方は“THE FACE Malcolm McLaren”で検索)に衝撃を受けたのが最初かな。「ワールズエンド」のバッファローコートに〈ティンバー〉のイエローブーツ、頭にはマウンテンハットをふたつ重ねて被ってて。あれを見てから、トレンチコートに目覚めていった気がします。

フイナム
フイナム

バッファローコートからトレンチコートへの飛躍はどういう流れで?

ラムダ
ラムダ

裾をぶった切ったショートトレンチとか、いわゆる“変形トレンチコート”みたいなものってあるじゃないですか。おれの中では、あのバッファローコートも、その延長線上にあるアイテムなんですよ。襟の形しかり、フロントの深いダブルの合わせしかり。ただ、マルコム・マクラーレンの格好を真似したくてたまらなかったけど、20代そこそこでバッファローコートを買おうとはならない。勝手にすごく高いものだと思ってたし。とりあえず「ワールズエンド」の当時モノを探すことが非現実的すぎて。

フイナム
フイナム

どうしてマルコム・マクラーレンの着こなしが、当時のラムダさんにそれほど刺さったんでしょうか?

ラムダ
ラムダ

スタイリング自体はもちろんだけど、惹かれたのはパンクの精神性ですね。マルコム・マクラーレンといえばパンクのひとだけど、ライダースを着て、裾をロールアップして〈マーチン〉を履く、みたいな格好をしてるわけじゃない。いかにもな格好=パンクってことではなくて、トラディショナルなものをぶっ壊すっていう姿勢がパンクなんだなって。それに気づいてから、自分のなかでファッションの自由度がすげえ広がったっていうのはあります。

フイナム
フイナム

この連載の第一回目でも「裏切りがないとコスプレになってしまう」という話をされていましたね。

ラムダ
ラムダ

やっぱりそれは、彼からの影響が結構あるかも。それ以前はパンク好きならパンクの格好をしないといけないって思い込んでたけど、「あのマルコム・マクラーレンがアメリカの靴なんて履くんだ」みたいな。しかも〈ティンバー〉の靴紐を茶色に変えたりしてるのね。速攻ハンズで茶色の革紐を買って、同じようにカスタムしたなあ。

Article image 〈メゾン マルジェラ〉の「レプリカ」ラインのトレンチコート。ビール瓶の栓を模したボタンは日本製のものからインスパイアされたのでは? というのがラムダさんの予想。「服飾の専門学生が行く『ユザワヤ』の投げ売りコーナーでこれと同じようなボタンを見つけて。日本で仕入れたボタンを本国に持ち帰って、より高級な仕様でつくってるんじゃないかな。そういうところもパンクだよね」

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