長谷川昭雄の対談連載
まじめに働いてんじゃねーよ!!(仮) Vol.04 ZORN 中編
ファッションディレクター、スタイリスト。英国の雑誌『MONOCLE』の創刊より制作に参画、ファッションページの基礎を構築。2014年には同誌のファッションディレクターに就任。2012年から2018年秋まで雑誌『POPEYE』のファッションディレクターを務めた。2019年よりフイナムと共同でファッションウェブマガジン「AH.H」を、2023年より〈CAHLUMN〉、「andreM hoffwann」をスタート。
1989年生まれ。東京都葛飾区新小岩出身のラッパー。
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※対談の前半は「AH.H」にて公開しています。
岸田元総理って地元が広島なんだよね。戦争というか平和関連のポスターに出てるのを見たことがある。
生まれは渋谷区みたいですね。
そうなんだ。岸田家は広島の一族だけど、ってことか。シティボーイだね。
そうですね、生粋の。でも広島は自分のルーツになるわけですよね。僕らも、東京という自分たちの生活圏内が、東京大空襲で大変なことになってたって全く想像できないですよね。浅草、亀戸、上野、あとは江東区一帯って、本当に焼け野原になったみたいです。そこから復興って、日本人ってマジで気合入ってますよね。
すごいよね。
マジでありがたいですよね。そういう人たちがいたから今があるわけで。
エネルギーが違うんだろうね。当時の人だって、戦争とかもちろん嫌だっただろうけど、戦地に向かった人がいっぱいいるわけじゃない。今の時代にそんなことしたいなって思う人は、1人もいないよね。
そうですね。もし自分が招集されることになったら、いかにバックれるかを考えます。
少子化なのに、戦争で若者がいなくなっちゃったら、ますますこの国が残っていけなくなるから、本当に意味ないよね。
東京大空襲のときも、大人たちはほとんど軍人として取られてるから、老人みたいな人しかいなかったみたいですね。消防団の人たちがちょっといるくらいで、子供たちは大体疎開してて。子供は足手纏いになるっていうのもあったみたいですけど、将来軍人にするためにとっておかないといけないからっていうのもあったみたいです。
なるほどね。
うちの娘たち、葛飾の学校に行ってるんですけど、小学校何年生からか毎年新潟に行くんですよ。なんでそんなことするんだろうって思ってたんですけど、どうやら葛飾一帯の疎開先が新潟だったらしくて、いまだにむこうの寺なり学校なりと交流があるんです。新潟の子たちもこっちに来て、交換留学みたいになってて。ただの学校行事だと思ってたんですけど、そうではなくて、そういう形で戦争のことを伝えようとしてる人たちがたくさんいるんだっていうのを知ることができたんですよね。子供たちも自然に関心を持てるようになるし、自分も戦争と向き合っていくなかで、そういう繋がりにも関心を持てるようになりましたね。ちなみに新潟の子たちはスカイツリーとか、めっちゃ喜ぶらしいですよ。
笑
最初、帝釈天とかに行くらしいんですけど、絶対つまんないですよね(笑)。
確かに。寅さんって言われてもね(笑)。
でも、戦争についていろんなことを知れば知るほど、なんか考えさせられますよね。
うん。もう、All My Homies党を作って出馬した方がいいよ(笑)。
僕いけそうじゃないですか?
絶対いけるよ。葛飾区は間違いない。みんな応援に来てくれるよ(笑)。俺も全力で応援に行くし。
日本にとっての戦争は80年前の話だけど、今も世界では戦争が行われてる。戦争だけは本当に良くない。世の中には分断を喜ぶ人がいるんだよね。そうしたら戦争になるから。今は中国とそうなりかねない。そんなことになったら地獄のはじまり。分断は良くない。
はい。
もし起こしたら、めちゃくちゃやばい話だからね。だから基本的にはないと思うんだけど、当時の戦争をどういう見方をするのかっていうのが、人によって全然違うよね。あれは、アジアをヨーロッパの植民地化から解放するための大東亜戦争だっていう言い方もあったけど、結局は資源を求めての侵略戦争だっていう主張をする人もいるし。その人のイデオロギーによって、右寄りか左寄りかで、視点が変わってきちゃうから、結局何が信用できるのかっていう。本を読めっていうからいろいろ買ってみた。いろいろ出てるけど、どっちの立場の人なのかによって捉え方が違うから、本だからと言ってよくわからないって思った。
そうなんですよ。だから僕もそういうことで行き詰まりましたね。正直、これまで全然関心なかったので。だけど関心がない人がほとんどだから、自分も関心なかったんですけどっていう目線から始めた方が入ってくるんですよね。「俺も」ってなるし。
東京大空襲とか原爆みたいなものってさ、その現実を知るべきで、知ってたらもうそんなことなくなると思う。非人道的。大前提として日本が悪い、日本がアジア諸国を植民地化しようとしてたことに対する報復である、っていう解釈みたいだよね。
今回、撮影中に若い子にけっこう声かけられてたね。
街を出歩くと声かけられることはありますね。
写真撮ってください、みたいな。
誰でもいいから写真撮りたいです、みたいなやつとは撮らないですけどね。けど、超熱量あるやつがたまにいるんで、そういうやつには応えてあげるようにしてます。「いつも曲聞いてます」「本当に命救われました」って泣きながら言ってくるやつとかいっぱいいるんで。よっぽど何かの言葉が刺さって、自分の一部になってるんだろうなって、見ればわかるんですよ。一回、All My Homiesのタトゥーが入ってる女の子に声かけられたことがあって。「すごいファンです」って。
えぇ、そうなんだ。それは平気なの?
全然嫌じゃないですよ。その子も泣きそうになってました。そのとき「宇ち多゛」のキャップ被ってたんで「これあげるよ」って、(『ONE PIECE』の)シャンクスみたいな感じで(笑)。
最近は日本語ラップが浸透してきてるしね。
声かけてくるのは男ばっかりですけどね(笑)。けど、あのとき撮影してたやつかっていう感じで、この記事読んでくれたらいいですよね。
そうだね。
後編に続く。