ファッションでも音楽でもスポーツでも、どんなジャンルもその人にしか出せないスタイルがある。“Style is Everything”。そう、だれかが言った、スタイルがすべて。『スタイルの履歴書』は、文字通りスタイルのある大人へのインタビュー連載。毎週月・水・金曜更新で、第14回目は演出家として世界のフィールドで活躍し続ける、若槻善雄さんの裏方としての美学を教えてもらいます。
09. 憧れのファッション・デザイナーが近くにいる仕事。
「サル・インターナショナル」での仕事は、タケ先生(菊池武夫)、稲葉賀惠さん(ファッション・デザイナー)、松田光弘さん(〈NICOLE〉デザイナー。故人)、小林由紀雄さん(〈MONSIEUR NICOLE〉デザイナー)、中島伊津子さん(〈NICOLE〉デザイナー。故人)といった錚々たる方々が目の前にいて「若槻ィ~」と呼んでくれる。それはそれはゾクゾクするものでした。
1985年に読売新聞社主催で「東京プレタポルテ・コレクション」の第一回が開催されたんです。いまの都庁のところに「EAST」と「WEST」ふたつのテントが立って、そこで60ぐらいのショーをやったのだけど、うちの会社だけで40ほどをうけおっていて、ほとんど会場から帰れませんでしたね。でもそれに携われた喜びと毎日のハプニングにワクワクしたものです。その日の現場が終わったら打ち上げに行き、明け方、渋谷の「フィンランド」というサウナで風呂だけ入って、そのまま車で現場入りして、フロントガラスに「最初に来たひとは起こしてください」って紙を置いてクルマのなかで寝ていましたね。
クライアントはエッジィなデザイナーズ・ブランドでしたが、そのころのぼくの格好は古着の〈BROOKS BROTHERS〉のボタンダウンにコットン・パンツとかジーンズというアイビーっぽい感じでした。動きやすくて悪目立ちしないから。その発想から、のちのち黒い服ばかり着るようになるんです。
Profile
若槻善雄(演出家)
1962年、長野県長野市出身。パリ、東京コレクションを中心に音楽ライブやアート展などの演出を手がける「ドラムカン(DRUMCAN)」所属。40年以上、さまざまなブランドを演出家という仕事で支え続けるプロフェッショナル。生涯現役を掲げて裏方の美学を貫きながら、今日も新たなクリエイションを発信します。
インスタグラム @yoshio_wakatsuki