ファッションでも音楽でもスポーツでも、どんなジャンルもその人にしか出せないスタイルがある。“Style is Everything”。そう、だれかが言った、スタイルがすべて。『スタイルの履歴書』は、文字通りスタイルのある大人へのインタビュー連載。毎週月・水・金曜更新で、第14回目は演出家として世界のフィールドで活躍し続ける、若槻善雄さんの裏方としての美学を教えてもらいます。
12. 〈COMME des GARÇONS〉と川久保玲のこと。
〈COMME des GARÇONS〉はぼくにとって特別なブランド。雑誌で見た「黒の衝撃」にはじまり、学生時代には〈COMME des GARÇONS HOMME〉の服をローンで買うほどでした。仕事で関わるようになったのはサル・インターナショナルのとき、確か1989年だったと思います。サルでギャルソンのショーをやることになって、ぼくも四方さんのアシスタントとして打ち合わせに同席するんですが、目の前には川久保玲さんがいる。「うわー!」って感じですよね。
ショーが朝10時半で、スタッフの集合が6時。アシスタントだったぼくは5時くらいには現場入りしたんですが、その時間ですでに川久保さんがいる。本番前でナーバスになっているだろうからそれを解消するのが自分たちの仕事だと思いましたし、本当に瀬戸際までやっているから、こっちも諦めちゃダメだ、というのをその姿勢から教わりました。
1994年1月のメンズまではサルの一員としてギャルソンのショーに携わっていましたが、その年の2月に会社を辞めています。4月に羽田空港でショーがあり、それにあたって「現場に入ってほしいと川久保がいっています」とプレスの方から電話をもらいました。嬉しかったですね。打ち合わせのときにフィナーレをどうするかという話で川久保さんがぼくに意見を求めてくれて。考えを伝えたところ、それが採用されたんです。以後、長い年月担当させてもらっていますね。
Profile
若槻善雄(演出家)
1962年、長野県長野市出身。パリ、東京コレクションを中心に音楽ライブやアート展などの演出を手がける「ドラムカン(DRUMCAN)」所属。40年以上、さまざまなブランドを演出家という仕事で支え続けるプロフェッショナル。生涯現役を掲げて裏方の美学を貫きながら、今日も新たなクリエイションを発信します。
インスタグラム @yoshio_wakatsuki