ファッションでも音楽でもスポーツでも、どんなジャンルもその人にしか出せないスタイルがある。“Style is Everything”。そう、だれかが言った、スタイルがすべて。『スタイルの履歴書』は、文字通りスタイルのある大人へのインタビュー連載。毎週月・水・金曜更新で、記念すべき第10回目は音楽家として幅広い活動をしながら、クルマや時計、それにファッションなどを愛する人としても知られる松任谷正隆さんが登場。6月の計13回に及ぶ言葉と写真などから、松任谷正隆さんのスタイルを教えてもらいましょう。
08. 吉田拓郎『結婚しようよ』の録音に呼ばれる。
菅節和との演奏はいまはなき東急本店で開催されたコンテスト。菅が「すごいドラマーだ」といって連れてきた林立夫とぼくでバックを務めました。そのときの審査員が加藤和彦さん。コンテストのあと、ほどなくして加藤さんから連絡があり、林とぼくはCM音楽の録音のためにスタジオに行くことになるんです。林はすでに経験があったみたいだけど、ぼくはこれが初めての録音スタジオ。ピアノを弾いて1万2000円だか1万3000円だかをもらい、「ピアノを弾いてお金がもらえるなんて、なんだこれは」と思いましたね。
それから数週間後、また加藤さんから電話がありました。今度はテイチクのスタジオで、行ってみたらそこには吉田拓郎が。それで録音したのがシングル『結婚しようよ』。1972年1月発売だから1971年のことですかね…。録ってからリリースまで結構あいだが空いていたと記憶しています。ともあれ、これがレコードのための最初の録音でした。
こんな出来事があった高校3年から大学1年くらいの時期は、自分にとって非常に濃い1年でした。それにしても菅と出会ってピアノを引き受けていなかったら、いまのようにはなっていなかったですね。満員電車に揺られるサラリーマンは無理だし、休みの多い仕事がよかったからそうすると学校の先生かなぁ、なんて10代の半ばごろから考えるようになっていましたから。クラシックの世界は僕には向いてなさそうとも感じていましたし。
Profile
松任谷正隆(音楽家)
1951年11月19日生まれ。音楽プロデューサー・編曲家・キーボーディスト・作曲家などの顔を持つ音楽家であり、日本自動車ジャーナリスト協会所属。鈴木茂、小原礼、林立夫とのバンド“SKYE”としても活動。『松任谷正隆の素』『おじさんはどう生きるか』『車のある風景』などの著書もあり、犬派で愛犬の名前はロイ。毎週金曜日の17時30分からは、TOKYO FMの『松任谷正隆のちょっと変なこと聞いてもいいですか?』に出演中です。
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