スタイルの履歴書。岡本博 #13

Text: Kenichi Aono

Edit: Yusuke Suzuki

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ファッションでも音楽でもスポーツでも、どんなジャンルもその人にしか出せないスタイルがある。“Style is Everything”。そう、だれかが言った、スタイルがすべて。『スタイルの履歴書』は、文字通りスタイルのある大人へのインタビュー連載。毎週月・水・金曜更新で、第11回目はトイズマッコイの創設者として知られる岡本博さんをゲストに迎えました。7月の全13回、ぜひお付き合いください。

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13. 「本物がほしい」をつきつめていけば本物は超えられる。

 2001年ごろ「ザ・リアル・マッコイズ」が倒産し、そこの従業員の一部をわたしの会社で引き受けるかたちで服の製造がスタートしました。服をまたやりたいとは思っていたのでいいタイミングでしたが、かつて「ザ・リアル・マッコイズ」に関わっていたことから大きな損害を被ってしまい、この時期はなかなか苦しかったですね。服づくりを再開するにあたっては、自分の納得いくものをまたつくれるという、ある意味初心に帰るような喜びがありました。以後、このスタイルや小規模なスケール感を変えずにやっています。

 いま、会社の代表は浪川(雄介。有限会社トイズマッコイプロダクト代表取締役)にやってもらっていて、わたしは一着に1年、2年を費やしてじっくりものをつくることを考えています。ある種のステータスとそれを手にしたときの喜びを維持する取り組みですね。

 工場の高齢化が進み、また革の供給も安定的でない時代、なんとかよりよいものをつくっているのが現状です。こういうと暗い話に聞こえますが、「こんな縫製工場が見つかった」とか「あの工場が動いてくれた」みたいなことも耳に入っていて、それでわたしたちは救われているなとも思います。工場には情熱を持った若い世代もいますしね。わたしがやっているのは素人が物欲だけで始めたことですが、いろんなひとの協力のもと、それをつきつめていけば本物を超えることができる、最近はそんなふうに思っています。

  • 今年72歳を迎える岡本さん。今なおヴィンテージバイクに乗り、変わらずものづくりと向き合い続ける日々。愛するレザーアイテムと同じように、歳を重ねることで滲みでる人としてのかっこよさはプライスレスそのものです。

    今年72歳を迎える岡本さん。今なおヴィンテージバイクに乗り、変わらずものづくりと向き合い続ける日々。愛するレザーアイテムと同じように、歳を重ねることで滲みでる人としてのかっこよさはプライスレスそのものです。

Profile

岡本博(トイズマッコイ 会長)

1953年、愛知県名古屋市生まれ。イラストレーターとしてキャリアをスタートし、1996年にミリタリーやモーターサイクルをベースとしたアパレルブランドの〈トイズマッコイ(TOYS McCOY)〉を設立。生粋のスティーブ・マックイーン好き&モーターサイクル乗りとしても知られ、〈ハーレー ダヴィッドソン(HARLEY DAVIDSON)〉や〈トライアンフ(TRIUMPH)〉のヴィンテージバイクでレース参戦も。現在は〈トイズマッコイ〉」の会長として、ものづくりと向き合う日々を送っています。

ホームページ http://www.toys-mccoy.com