スタイルの履歴書。岡本博 #11

Text: Kenichi Aono

Edit: Yusuke Suzuki

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ファッションでも音楽でもスポーツでも、どんなジャンルもその人にしか出せないスタイルがある。“Style is Everything”。そう、だれかが言った、スタイルがすべて。『スタイルの履歴書』は、文字通りスタイルのある大人へのインタビュー連載。毎週月・水・金曜更新で、第11回目はトイズマッコイの創設者として知られる岡本博さんをゲストに迎えました。7月の全13回、ぜひお付き合いください。

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11. 自分で型紙を作った最初の「A-2」。

 最初の「A-2」は自分でつくったんです。はじめに手をつけたのが革。「A-2」はホースハイドなんですが、まず衣料用を探すのがひと苦労でした。最終的にシューズの裏に使う馬革をなめし直して使うことに。ジッパーなどのパーツはアメリカで調達したかったのですが、昔のモデルは廃番ということで、これも日本のメーカーに依頼して近いものをつくってもらいました。アメリカではスミソニアン博物館やペンタゴンでミル・スペックに関する資料を閲覧できたので、それをもとにステッチの針数など細かく把握できたのですが、肝心の型紙がない。いろんなメーカーが出しているフライトジャケットってそれぞれかたちが違うじゃないですか。その理由はこれだったんです。ともあれ仕方がないので、トルソーに「A-2」を着せて、その上から新聞紙を貼ってわたしが型紙をつくりました。

 コストなどをペイするために数量は300着に。借金はせずつくることができましたが、売れるかどうかわからない。ところがふたを開けてみると限定数を超えた現金書留が送られてきました。このころ取引の都合なども考えて関わってくれていたふたりとともに立ち上げたのが「ザ・リアル・マッコイズ」の前身である「ハリオスコージャパン」です。「A-2」を発送したら次を期待する声が多く、続篇としてニュージーランドでつくった「B-3」などをリリースしたんですが、なかなか思いどおりにいかず苦労しましたね。

  • スティーブ・マックイーンが映画『大脱走』で使用した、バド・イーキンスによるトライアンフの1961 TR6 TROPHYを完全再現。岡本さんは街乗り用に保安部品(ヘッドライトやウインカーなど)を装着し、エンジンのヘッドとシリンダーは1963年以降のユニット用である9本スタッドボルトへ換装。

    スティーブ・マックイーンが映画『大脱走』で使用した、バド・イーキンスによるトライアンフの1961 TR6 TROPHYを完全再現。岡本さんは街乗り用に保安部品(ヘッドライトやウインカーなど)を装着し、エンジンのヘッドとシリンダーは1963年以降のユニット用である9本スタッドボルトへ換装。

  • 当時『Mr.BIKE』に掲載された岡本さんのコレクションを紹介する記事。そのマニアックな知識は、並々ならぬ情熱に裏付けられたものです。

    当時『Mr.BIKE』に掲載された岡本さんのコレクションを紹介する記事。そのマニアックな知識は、並々ならぬ情熱に裏付けられたものです。

Profile

岡本博(トイズマッコイ 会長)

1953年、愛知県名古屋市生まれ。イラストレーターとしてキャリアをスタートし、1996年にミリタリーやモーターサイクルをベースとしたアパレルブランドの〈トイズマッコイ(TOYS McCOY)〉を設立。生粋のスティーブ・マックイーン好き&モーターサイクル乗りとしても知られ、〈ハーレー ダヴィッドソン(HARLEY DAVIDSON)〉や〈トライアンフ(TRIUMPH)〉のヴィンテージバイクでレース参戦も。現在は〈トイズマッコイ〉」の会長として、ものづくりと向き合う日々を送っています。

ホームページ http://www.toys-mccoy.com