ぼくの好きな店。 Vol.7 庄司信也「西新 福ずし」
服屋で働いていた頃から、福岡には仕事でも遊びでも頻繁に通っていました。音楽業界で仕事をするようになってからも、担当していたバンドのツアーで福岡は必ずと言っていいほど訪れる土地。そして去年からは、自分がプロデュースしている飲食店の関係で、月に一度は福岡へ行くようになり、ますます縁が深くなっています。
そんな中、福岡在住のミュージシャン、小山田壮平くんに誘われて一緒に訪れたのが、「西新 福ずし」(以後、福ずし)。それ以来、すっかりこの店のファンになってしまいました。
まず驚いたのは、味と値段のバランス。いわゆる“観光価格”とは無縁で、地元に根付いた安心感のある価格設定。しかも、クオリティは抜群。内装も気取っていなくて、肩肘張らずに楽しめる空気感が心地いい。カウンター越しに話しかけてくれる大将の人柄もあって、ついつい通いたくなる店なんです。
福岡といえば、やっぱり魚介。ここではいつも、まず刺身をつまんでから寿司へ。刺身はレモンと塩で食べたり、柚子胡椒と醤油で食べてみたりと、シンプルな食べ方が素材の旨さを引き立ててくれる。寒い季節にはカワハギが格別。イカも東京では味わえないような新鮮さで、地元の魅力をしっかり感じられます。
お酒もまた楽しみのひとつ。まずはビールから始まり、焼酎や日本酒へ。なかでもおすすめは、熊本の米焼酎「人吉(ひとよし)」。ブランデーのような香りがあって、寿司との相性も抜群なんです。実はこのお酒との出会いも「福ずし」ならでは。隣に座っていたマダムに勧められて、蔵元の社長さんまで紹介してもらいました。
さらに「寿司ワイン」なるものもあって、これがまたいいんですよ。魚の脂とワインの酸が絶妙にマッチして、食がどんどん進む。そんな細やかなセレクトにも、この店の懐の深さを感じます。
ある日、隣に座っていたのは、西新の人気焼き鳥店の大将。「福ずし」はそんな地元の料理人たちも足繁く通う場所なんです。そういう店って、やっぱり信頼できるし、地元に愛されている証拠。閉店まで客足が絶えないのも納得です。
僕が好きなお店に共通するのは、情緒と風情、そして歴史。それと、料理だけじゃなく、お酒のセレクトにもそのお店の“美意識”がにじむような場所が好きです。大手チェーンの便利さもありがたいけれど、嗜好の合う仲間と語らいながら過ごす時間には、やっぱり個人店ならではのぬくもりが必要ですよね。
そういうお店には、近くに行ったときには必ず寄って、しっかりとお金を落としたいと思っています。
住所:福岡市早良区西新5-15-28New8西新1F
TEL:092-822-0330
営業時間:17:30~深夜1:00(LO 0:00)
定休日:月曜日
1978年 山形県出身。2000年、ファッション・レーベル mister hollywood / N.Hoolywoodの創立を経て、2004年 音楽レーベル、Youth Records、 2010年 クリエイティブ・スタジオ、1994を設立。2020年、1994/ Youth Recordsを脱退。時期を同じく、あらたにクリエイターを擁するスタジオ、Fu-10、音楽レーベルshu-ha-riを設立、自身も所属としてクリエイティブ・ディレクター、音楽プロデューサー、アート・ディレクターとして活動。2022年、eyewearレーベル、一寸一杯を始動。
Instagram:@manatsumirai