ファッションでも音楽でもスポーツでも、どんなジャンルもその人にしか出せないスタイルがある。“Style is Everything”。そう、だれかが言った、スタイルがすべて。『スタイルの履歴書』は、文字通りスタイルのある大人へのインタビュー連載。毎週月・水・金曜更新で、第3回目は日本を代表するメンズブランド〈タケオキクチ〉の創設者兼デザイナーの菊池武夫さんの半生を辿ります。
12. ずっとやりたかったことを〈TAKEO KIKUCHI〉で実現。
クリエイティブなショーとちゃんと売っていかなきゃいけない現実のギャップに苦しんだ末、1984年に株式会社MEN’S BIGIを離れて株式会社ワールドに移籍、〈TAKEO KIKUCHI〉をスタートします。これで本来の自分の姿が見えてきてクリエイションに専念することができるようになりました。
最初のコレクションでは、1950~60年代のマイルス・デイヴィスのスタイルも参照しました。昔、マイルスの“キモノ・スリーブ”のスーツを知って衝撃的だったので長年やりたかったんです。スーツのあり方を広げていくきっかけはマイルスでした。赤坂「ムゲン」で行った1986年春夏のショーはレイ・ペトリほかバッファローのメンバーとつくり上げて、いま映像を見返しても「面白いのをつくったなぁ」と思えるものになりました。ただ、やってる最中は興奮と「これで本当によかったのか?」という感情が入れ替わり襲ってきて落ち込んだりもしましたね。
1986年には西麻布に「TKビル」をオープンします。これは昔に旅して「こういうことをやりたい」と思っていたことを全部盛り込んだもの。自分の服のほか〈PATRICK COX〉や〈BILL AMBERG〉などインポートものも取り揃え、バーバー、ビリヤードのスヌーカー・バーも併設しました。こういう構想はBIGI時代からあったんですが、財力や忙しさで難しかった。実は「MEN’S BIGI EUROPE」はその一環だったんです。
Profile
菊池武夫(タケオキクチ 創始者兼デザイナー)
1939年生まれ。日本を代表するメンズブランド〈タケオキクチ〉の創始者であり初代デザイナー。音楽、映画、クルマなど多彩な趣味を持ち、2024年には生誕85年を記念して自身が監修するジャズ・コンピレーションをリリースした。
HP:https://store.world.co.jp/s/brand/takeo-kikuchi/
Instagram:@takeokikuchi_official