だれにだってお気に入りの店がある。レストラン・食堂・喫茶店・カフェ・バー…。知り合いだから・おいしいから・居心地がいいから…。ジャンルもその理由もひとそれぞれ。ひとつ言えるとしたら、そんなお店があればそれは豊かな人生に違いない。だから、あの人にお気に入りのお店を教えてもらいたい。第3回目は、森岡書店代表・森岡 督行さんが年に数回訪れるという、帝国ホテル 東京の1Fにある「ランデブーラウンジ」とサンドイッチの話。
究極のサンドイッチとおもてなし。
初めて帝国ホテル 東京に足を踏み入れたのは、隣の宝塚劇場で働いていた学生の頃。休憩時間に日比谷公園へ向かう時、よくホテルのなかを通っていました。当時中野の3万円くらいのアパートに住んでいたぼくからするとそこは別世界。商談をしているスーツ姿のひとたちを見て、大人ってすごいなぁなんて呑気に考えていました。当然ラウンジに入るなんて概念すらなく、空間そのものを楽しんでいましたね。いま来ても、1960年代のひとからみた東京の未来って感じでわくわくします。
社会人になってからようやく、自分の稼いだお金で「ランデブーラウンジ」へ。ホテルの正面玄関から入って左にあるラウンジなんですが、そりゃあもう緊張しましたよ。席に着いて思ったことは、天井が高い。あとは、ひとと話をしたり、ひとの話を聞いたりするときの適切な距離というものがあるとしたら、それが計算されてかつ反映されているかのような間合い。店名に入っているランデブーはフランス語で「約束」という意味で、何か取り決めごとをするなど打ち合わせに最適な場所なんですが、ぼくは用もないのにひとりでただ座る時間も好き。「柱が24本あるけど、どういう意味なんだろう?」とか、コーヒーや紅茶を飲みながら過ごす、一見無意味な時間は贅沢です。