映画の現場には、技術パートとして「撮影部」「照明部」「録音部」がある。それぞれの頭文字をとって通称「撮照録」と呼ばれているのだが、実は今号のテーマと深く関係していて、「撮・照・録」の順番に「吞む・打つ・買う」に興じていたのだそう。つまり撮影部は酒を浴びるように呑み、照明部はギャンブルに明け暮れ、録音部は女性にうつつを抜かしていた。専門的な職業ゆえの特徴なのか、代々つづく伝統なのかは不明だが、映画と道楽の結びつきを感じる話である。
さて本題。本作『リービング・ラスベガス』はまずはじまりが素晴らしい。主人公のベンがスーパーで小躍りをしながら酒瓶をカートに入れていくシーンは、この男の人間性のすべてを表している。すでにお分かりの通り、これはアル中の物語。酒が原因で職を失い、妻子にも逃げられる、文字通り人生が転落していく話だ。しかしここがアル中の発想。どうしようもない人生なら、死ぬまで酒を呑みつづけようと意を決し、ラスベガスに向かうのである。