蕨駅東口から歩いて約3分。日が暮れない時間から、香ばしいタレの匂いが道に漂っている。食欲をそそる香りに誘われた先は、「㐂よし(きよし)」という今年9月で創業54年を迎えた老舗酒場だ。
営業開始の16時を迎えた途端、ひと組またひと組と次々に席が埋まる。アートディレクターであり居酒屋探訪家である太田和彦さんを取材した際、「開店とともにお客さんが来る居酒屋は、いい居酒屋」とおっしゃっていたのを思い出す。
HANG OUT VOL.2
TABIUCHI in SAITAMA part.2
Chapter 06
HANG OUT VOL.2TABIUCHI in SAITAMA part.2
前編では俳優の山中崇さんと一緒に3カ所のスポットを巡る様子をお届けし、後半では編集部が川口→戸田→蕨→浦和→大宮と埼玉を北上。競馬、競輪、競艇、オートレース。意外にも、日本の公営ギャンブルがすべてそろっているのは、全国で埼玉と福岡しかない。埼玉だったら、東京から1時間もかからずに行けるので、朝から晩まで遊ぶにはちょうどいい。結果はさておき、美味い酒と肴で1日を締めれば、いい休日となるに違いなし。刺激を求めて、日帰りの旅打ちへ。
蕨駅東口から歩いて約3分。日が暮れない時間から、香ばしいタレの匂いが道に漂っている。食欲をそそる香りに誘われた先は、「㐂よし(きよし)」という今年9月で創業54年を迎えた老舗酒場だ。
営業開始の16時を迎えた途端、ひと組またひと組と次々に席が埋まる。アートディレクターであり居酒屋探訪家である太田和彦さんを取材した際、「開店とともにお客さんが来る居酒屋は、いい居酒屋」とおっしゃっていたのを思い出す。
「みそ焼き」の6本セットは、カシラ・タン・ハツ・レバー・ナンコツ・シロが基本。「煮込み」も自慢の逸品で、大きいシロモツの食感とコクのある味わいが酒と合う。みそ焼き ¥640、煮込み ¥320、生ビール¥600(※10月現在)
店内は、コの字カウンターの15席のみ。壁に貼られたメニュー札に並ぶのは気をてらっていない定番料理だが、長年この地で愛され続ける味がある。ここの名物は、豚モツの「みそ焼き」。ほどよくニンニクが効いた甘辛の味噌だれは濃厚で、豚モツの旨味と調和する。
東京にも味噌だれの豚モツを食べられるお店はあるが、「㐂よし」がルーツと言われているそうだ。そして、価格は良心的だから、昼の勝負で財布に痛手を負ったとしても、「㐂よし」は温かく迎えてくれる懐の深さがある。
浦和駅からほど近い住宅街にある浦和競馬場。正門をくぐり最初に立ち寄りたいのは、勝利の手引き書となる競馬新聞の売店だ。これさえあれば人気馬が分かるうえ、小脇に抱えるだけで周囲に馴染んでサマになる気がしなくもない。
馬券を選びかねるなら、レース前にパドックを周回する馬の状態を確認してみよう。手堅く勝ちに近づきたいなら、場内にいる公認予想士から予想を買うのもあり。
勝負師気分でアーケードを進むと、飲食店が立ち並ぶ。ギャンブル飯と呼ばれるB級グルメも醍醐味のひとつであるが、フライや丼ものや黄色いカレーなど、ここには名物がたくさんある。日によっては、先着でお菓子のプレゼントや特産物の販売など、埼玉の各地域を味わえるイベントも開催され、さながら道の駅のようだ。
ジューシーで食べ応え抜群の名物チキンカツ。これひとつでビール2杯は飲めそうだ。ゲン担ぎなのか、浦和競馬場はカツのメニューが豊富にそろう。 チキンカツ ¥300 生ビール ¥650
そして、馬券を購入し、観覧スタンドへ。コースは南関東4競馬場のなかで1番小さく、観客席との距離が近いため、馬の走る足音やスピードは臨場感たっぷり。最終コーナーからゴールまでの直線距離は短く、3コーナーで仕掛ける騎手の攻防に注目を。小回りなコース展開に、思わず声を上げてしまいヒートアップしてしまうだろう。
住所:埼玉県さいたま市南区大谷場1丁目8-42
電話番号:048-881-1551
開催日:10月21日(月) 11:40開門
10月22日(火) 11:40開門
10月23日(水) 11:40開門
10月24日(木) 11:40開門
10月25日(金) 11:40開門
夜はレースの興奮を静め、しっぽりとしながら美味しい料理に舌鼓を打ちたいなら「大宮和食割烹盆彩」へ。大宮駅の喧騒から離れた一隅に隠れ家のように佇み、カウンター7席のみのこぢんまりとした店内は落ち着いた雰囲気で居心地がいい。
天然本鮪の刺身は、中トロと大トロが混じった部位、腹中を使用。蕎麦豆腐など、丁寧に作られた一品料理は繊細な味わいだ。日本酒はメニューのなかから3種を飲み比べることも。 天然本鮪 ¥1500、蕎麦豆腐 ¥500、新政 S-type 2023 純米生原酒(70cc) ¥1,000、日本酒飲み比べ3種 (小)¥1,200、(大)¥1,500
ここは、“美味しいものを少しずつ”をコンセプトに掲げ、旬の食材を使った懐石料理をカジュアルにアレンジしたメニューを堪能できるお店。店主の内田昂宏さんは、銀座や表参道にある鮨や懐石料理のお店で18年間鍛錬を積んだというから、信頼を置ける腕前だ。
もちろん味に一切の妥協はない。例えば、刺身。鮮度はもちろんこだわっているが、赤身魚にはオリジナルでブレンドした醤油を、白身魚には江戸時代に使われていた調味料の煎り酒を添える。
そして、“お盆を彩る”という店名の通り、作家の皿やお椀に盛り付けられた料理は美しく、味覚だけではなく視覚でも楽しませてくれる。人気銘柄から気鋭まで、豊富な種類の日本酒が用意されているので、絶品の料理とともに心ゆくまで味わいたい。
住所:埼玉県さいたま市大宮区桜木町4-119
電話番号:048-919-2277
営業時間:ランチ 11:30〜15:00(L.O.14:00)
ディナー 17:30〜23:00(L.O.22:00)
定休日:不定休※SNSで告知
Instagram:@bonsai_washoku
大宮競輪場には、散歩がてら歩いていくのがおすすめだ。大宮駅東口にある県内随一の繁華街を抜けると、2,400年以上の歴史を誇る武蔵一宮氷川神社の参道にたどり着く。その参道は日本一長く、道沿いには老舗の甘味処や小洒落たカフェなど気になるお店がたくさんあるので道中も充実するだろう。
大宮競輪場も氷川神社も、四季折々の植物を楽しめる大宮公園のなかに位置し、勝負の前後にゆったりとした時間を過ごすのも気持ちよさそうだ。
大宮競輪場は、東日本の競輪発祥の地。競輪の生みの親、倉茂貞助氏をたたえたGⅢグレード『大宮競輪 倉茂記念杯』が、毎年1月に開催されている。トップクラスの選手が出場し、イベントも充実しているため、大宮競輪場で1番の盛り上がりをみせる。
大宮競輪場は、全国の競輪場で3場しかない1周500mの大きなバンク(すり鉢状の滑走路)が特徴。ゴール前の直線は日本で1番長く、最終コーナーを回ったあとにスリリングな逆転劇が展開されることも。そんなコースの特性もあり、公営ギャンブルで唯一の人力を動力とする競輪ならではのドラマが繰り広げられやすく、ギャンブルを超えたスポーツとしての魅力を体感できるのだ。
競輪は、脚力や体力だけで競うほど単純じゃない。勝つために他の選手と連携し、ラインと呼ばれるチームを組むなど、位置取りや戦略が重要になる。男性選手のトップスピードは時速70キロオーバー。車さながらの速さで走りながら駆け引きする選手の姿に、感動を覚えてしまうはずだ。
住所:埼玉県さいたま市大宮区高鼻町4丁目
電話番号:048-641-1002
次回開催日:11月19日(火)、11月20日(水)、11月21日(木)
※大宮競輪 倉茂記念杯開催日
令和7年1月16日(木)、1月17日(金)、1月18日(土)、1月19日(日)
川口駅にある飲み屋街の一角に店を構える「居酒屋谷ツ田」は、サービス精神が旺盛だ。メニューは“安くて美味い”をモットーに、盛り付けはどれもボリューミー。お通しは断ることもできるが、「中トロの握り・アジフライ・小鉢」の3品が440円とコスパが高く、料理が入った豪華な箱を開く楽しみもエンタメ性があっておもしろいので必ず頼みたい。
新鮮な刺身に加えて、やきとり・やきとんなどの串ものも。いわゆる居酒屋メニューをほぼ網羅しているので、週3で来る常連も飽きることはない。 お通し ¥440、刺身盛り合わせ ¥1,850、水府自慢 純米吟醸 ¥650
そして、本鮪も含まれる「刺身盛り合わせ」は、毎月大きな赤字を生んでいるというほど採算度外視の盛り付けで、必ず満足できるだろう。店主の谷ツ田さんは、実家が中華料理店であるうえに、どんな料理でも作れるようになりたいと、割烹やもつ焼きなどのお店で修行を積んだだけあって、幅広いメニューでさまざまなニーズに応えてくれる。
ドリンクも、ビールやハイボールやサワーの定番から、30種類弱をそろえた日本酒までがラインナップ。昼はどれに賭けるか決めかねて、夜はメニューに迷う。どれも捨てがたいと、選択肢が多いのは幸せだ。