HANG OUT VOL.2 Nightlife in Sasebo
佐世保といえばスナックだそうです。
ハウステンボスだけと思ったら大間違い。日本海軍から米海軍の街になった佐世保には、日米文化が交差する独特な夜が花開く。勝っても負けても、楽しく呑めればなんでもいいじゃん。って、佐世保のスナックに通い詰めた写真家の松尾修さんもいってるよ。
PROFILE
松尾 修 / 写真家
1970年長崎県佐世保市生まれ。数々の広告ビジュアルを手掛ける傍ら、2014年より故郷である佐世保に焦点を当てた「サセボプロジェクト」を始動。2作目『誰かのアイドル』では佐世保の夜にフォーカス。現在も月に1度は佐世保に帰り、作品を撮り続けている。
「佐世保の男が奥さんを泣かせる三大趣味ってのがあってね。ひとつは釣り、2つ目はギャンブル。そして3つ目は飲み屋なんだ」
開口一番、松尾さんはこう言う。佐世保は長崎市からも福岡市からも離れた、いわば陸の孤島。それが故に、独自の文化が栄えていった。
「佐世保はさ、戦前に軍港にちょうどいいじゃんってことで急遽つくられた街なのよ。だから3代も遡ると、佐世保出身のひとってのはいないわけ。そういう意味で、街全体に自由な雰囲気がある。一方で、変な事件も多いんだけどね」
軍港の街として栄えた佐世保には、現在も米海軍の基地がある。その名残から飲み屋街も二分され、地元の日本人はスナックが軒を連ねる「夜店公園通り」、米兵たちは外国人バーが密集する「セーラータウン」へ集まる。観光で行くなら、まずはセーラータウンで乾杯するのがオススメだ。
「外国人バーは席料の概念がないから、基本的にキャッシュオン。一杯呑んで次を繰り返して、何軒か回ってみるのもいいかもね。ホステスはだいたいフィリピン人で明るいひとが多いし、米兵もたくさんいるから異国感を楽しめると思うよ」
余談だが、かつて松尾さんに佐世保を案内されたフイナム副編集長とライターは、この“一杯呑んで次”を繰り返し、一夜にして11軒もハシゴしたそう。ただの大酒飲みなだけか、佐世保の異国情緒漂う雰囲気がそうさせたのか…。おそらくどちらもだろう。
そして程よく酔いが回ったところで、夜店公園通りのスナックへ向かう。
「夜店公園通りには、“トッケン”って呼ばれる交番があって、その周りの広場にキャッチがたくさんいるのね。一見さんは、そこに立っているお姉さんに聞くのがいいよ。落ち着いたママのいるお店に行きたいとか、カラオケ付きで騒げるところに行きたいとか。観光なら、お店の子から地元話を聞くのも面白いけど」
佐世保に限った話ではないが、その土地土地の方言を聞けるのもスナックの魅力だ。カウンター越しに酒を交わすからこそお互い安心でき、方言混じりの会話が楽しめる。ちなみに、佐世保弁は動詞プラス「り」で「〜してね」という意味。食べてねは「食べり〜」、呑んでねは「呑み〜」。これは…、いいっすね。
外国人バーで海外気分を味わって、スナックで佐世保ならではの会話を楽しむ。11軒もハシゴした副編集長たちの気持ちがわかってきた。もし、ぼくが行ったとしても同じように呑んだくれるかもしれないなぁ。そんなことを思っていたら、松尾さんがひと言。
「それじゃ、取材はここら辺でいいかな? メシでも行く?」