HANG OUT VOL.3

LONG TRAIL

Chapter 07

2024.9.10

Photo:Yuya Wada

Text:Keisuke Kimura

Edit:Yuri Sudo

HANG OUT VOL1

HANG OUT VOL.3LONG TRAIL

ロングトレイル初心者が、まず頼るべきお店4選。
VOL.3 ナチュラルアンカーズ、リュネッツ + 山の道具屋

キャンプとも違う。登山ともまた違う。山道や里山を長い時間かけて歩くロングトレイル・ハイキングに持っていく道具は「ウルトラライト(超軽量)」であることがなにより大切。身軽になることで疲労はたまりにくくなり、それが長い距離を歩くことに繋がっていくというわけ。けれど初心者にとっては、なにが正解で、なにが間違いかなんてわからない。だったら、なんでも相談できるスタッフがいて、道具の品揃えも豊富な、こんな店に行こう!Vol.3では東京を飛び出して、長野と栃木の名店をご紹介。

Chapter 07 | Shops for Trailer

No.3 ナチュラルアンカーズ(長野県長野市)

長野市役所の隣、カフェの2階にある「ナチュラルアンカーズ」。

あまとみトレイルの出発地点にある、
アウトドアマンの交差点。

長野駅から徒歩10分の場所にある「ナチュラルアンカーズ」。

店主である戸谷さんは20歳の頃にロッククライミングにはまり、その昔、カナダの巨大な一枚岩やニュージーランドの巨大な一枚岩にアタックしていた。何百メートルにも及ぶ岩壁を登り、その中腹でテントを張って、宙ぶらりんで寝ていたクチだ。そこからときを経て、2015年に同店をオープンした。

とはいえ、現在お店にはクライミング道具の取り扱いはない。軽量な道具を中心に、幅広いトレッキングギアを取り扱っている。

長野といえばアウトドアフィールドのフィールドの宝庫。くわえて「ナチュラルアンカーズ」のある長野駅は、3年前にできた全長86キロの「あまとみトレイル」のスタート地点でもある。ちなみに、「あまとみトレイル」は、ロングトレイルの入門編に最適だ。健脚な人なら2泊3日、初心者でも3泊4日ほどでスルーハイクすることができる。

「厳密にいうと『あまとみトレイル』のルートからは少し外れているんですけれど、トレイルの前後に訪ねてくださるお客さんは結構いますね。なので、そうした方々にも使える製品も多く揃えているつもりです」

広い店内には、大小問わずさまざまなバッグパックが陳列されている。サコッシュ類も充実。

八ヶ岳山麓のレストラン「DILL eat,life.」が作る〈ザ スモールツイスト〉のトレイルフードは、ハイカーたちに大人気。

店舗入口に掲げられたナマケモノの看板。オーナーがクライマーだったことに由来する。

ブランドのラインナップはというと、誰もが知るUL系ブランドのほか、地元・長野発のブランドも多数ある。代表的なものが〈チャント!〉。デザイナーは海外のトレイルをスルーハイクしたことがあり、その経験から生み出される機能的なギアは注目を集めている。関西から長野に移住してきた夫婦のブランド〈ユージェーエムティー〉も使い勝手がいい。その街だからこその商品構成があるから、地方の店はおもしろい。

また、「ナチュラルアンカーズ」はワークショップなどのイベントも定期的に開催している。ロングトレイル経験者によるトークショーに、パッキングや地図の読み方、テーピングの巻き方など内容はさまざま。「YAMASAI」という2日間のアウトドアエキシビジョンも年に一度開催していて、作り手とユーザーが触れ合える貴重な機会を生み出している。

戸谷さんの妻であるアキコさんも、店頭に立っている。アキコさんももちろん、アウトドア好きだ。さまざまな経験をしてきた2人に、トレイルとギアのイロハを教えてもらおう。

「ナチュラルアンカーズ」ではこのひとに聞け!

戸谷 悠さん

戸谷 悠さん

1979年生まれ、長野県出身。学生時代にクライミングにハマり、大学卒業後は職業にすることを目指し、海外で活動。その後帰国し、8年の会社員時代を経て、2015年に同店をオープン。UL系のアイテムを中心に、幅広い登山用品を扱っている。

INFORMATION

ナチュラルアンカーズ

住所:長野県長野市鶴賀緑町1607-12シンリョービル2F
電話:026-217-8512
時間:11:00〜18:30
定休日:月(隔週)・火
Instagram:@naturalanchors

No.4 リュネッツ + 山の道具屋(栃木県那須塩原市)

カフェやライフスタイルショップなどの出店が続き、数年前から人気のエリアとなっている黒磯に「山の道具屋」はある。

北関東のUL文化を支え、発信する。

2011年、栃木県の那須にオープンしたのがセレクトショップ「リュネッツ」。その数ヶ月後、「リュネッツ」の隣にULギアを取り扱う「山の道具屋」がオープンした。

店主はどちらも、水戸岳志さん。

水戸さんはほかにも、ギアブランド「シェルト」を2012年に知人と立ち上げていたり(ボトルホルダーがめちゃくちゃ人気)、イタリアのアウトドアメーカー「ボンファス」の代理店を務めるなど、活動は多岐に及んでいる。

そんな水戸さんはというと、トレッキングにも興じながら、最も得意とするアクティビティはフライフィッシング。原流域にベースキャンプを作って、そこを拠点に沢をのぼり、魚を狙う。日が暮れたらベースキャンプに戻り、夜を明かす。場合によっては、奥にベースキャンプを移動することもある。

「ロングトレイルほどではないですけど、フライフィッシングも荷物をもって長距離を歩くことが多いんです。最初は、荷物を軽くしたいと思ってカップヌードルの外側をはぶいたりして、自分なりに軽量化を図っていたんですけど、そんなときにULという世界があることを知って、そこからのめりこんでいった感じです」

「渓の翁」で知られる渓流釣り名人・瀬畑雄三さんにも影響を受けたという。ブルーシートをタープがわりにする「瀬畑ハウス」は、水戸さんも実践済みだ。

「山の道具屋」に置いてあるギアは、水戸さんが山の中で使うかどうかが基準。なかでも〈山と道〉の物量と種類は豊富で、都内では売り切れとなっているものも、タイミングによっては在庫があったりもする。

「〈山と道〉に関しては、お店をはじめた当初から置かせてもらっています。実際にフィールドでも使いやすいし、シンプルで、本当によくできていますから。それと、たとえ軽くなくても、使いたいものってあるじゃないですか。ストイックに軽さを追求するなら器は間違いなくチタンがいい。でも、木の器は保温性があるし口当たりも柔らかい。削ぎ落とすだけでなく、そうした遊び心のアイテムも取り扱っているのも特徴かと思います」

「リュネッツ」と「山の道具屋」は店内で繋がっている。ふたつの店の趣はまったく異なる。

ここにくれば、ウェアからギアまで、ひととおり揃えることができる。バラエティに富んだ商品も多数。

〈山と道〉の品揃えは特に多い。ショーツやザックなどは、サイズ、カラーともに豊富。

当連載の冒頭でも伝えているように、ウルトラライトのギアを持つことで重量は軽くなり、より遠くの距離を歩けるようになる。ただ、最後に水戸さんが教えてくれたのは、それ以外の副産物。

「ウルトラライトのギアは軽い分、どうしても耐久性が低くなります。なので、壊れたときの対処法も考えなくてはいけない。そうなった場合、その場所にあるもので、なんとかしなければいけないですよね。となると、道具とより向き合わなくてはいけないし、スキルも必要になってきます。ULのギアを持っていくようになってから、山でのアドリブ力は確実に上がったと思います」

なにを持っていくかより、置かれた状況にどう適応し、乗り越えるか。考えを巡らせる時間が増えることも、ULでハイキングやトレッキングをする楽しみのひとつなのかも。

「リュネッツ + 山の道具屋」ではこのひとに聞け!

水戸岳志さん

水戸岳志さん

1977年生まれ、栃木県出身。高校時代にフライフィッシングと出会い、3月から9月の期間は日帰り、テント泊を含め、約50日を山のなかで過ごす。現在は、那須から続くロングトレイルを作るプロジェクトに参画中。2025年の春には2店舗をオープン予定。

INFORMATION

リュネッツ + 山の道具屋

住所:栃木県那須塩原市豊町8-37
電話:0287-74-2405
時間:12:00〜18:00
定休日:月・火
Instagram:@lunettes_yamadougu

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