HANG OUT VOL.1

LONG TRAIL

Chapter 07

2024.9.10

Photo:Yuya Wada

Text:Keisuke Kimura

Edit:Yuri Sudo

HANG OUT VOL1

HANG OUT VOL.1LONG TRAIL

ロングトレイル初心者が、まず頼るべきお店4選。
VOL.1 ハイカーズデポ(東京・三鷹)

キャンプとも違う。登山ともまた違う。山道や里山を長い時間かけて歩くロングトレイル・ハイキングに持っていく道具は「ウルトラライト(超軽量)」であることがなにより大切。身軽になることで疲労はたまりにくくなり、それが長い距離を歩くことに繋がっていくというわけ。けれど初心者にとっては、なにが正解で、なにが間違いかなんてわからない。だったら、なんでも相談できるスタッフがいて、道具の品揃えも豊富な、こんな店に行こう!1店舗目は「ハイカーズデポ」です。

Chapter 07 | Shops for Trailer

ビルの入り口を入ってすぐの中2階に位置する「ハイカーズデポ」。店舗は2つにわかれており、左側にはウェアやバッグ、小物類など、右側にはテントや寝袋などの大物が並ぶ。

ロングトレイル界の
第一人者がいるお店。

いまから15年前の2008年。当時、ハイキングなんて言葉は一般的ではなかったし、ましてやロングトレイルを歩く人なんて、ひと握りもひと握り。ウルトラライト(以下、UL)の道具も、保守的な山好きたちにとっては批判の対象だった。ULハイキングの専門店「ハイカーズデポ」が誕生したのは、逆風しか吹いていなかったそんな年。オーナーの土屋さんは言う。

「その頃のネット掲示板には、ぼくやお店の批判スレッドがいっぱいあったんです。『こんなペラペラな道具で山に行けるか!』ってね。元々、別のお店でバイヤーをやっていて、そこから独立したんですけど、それまでお付き合いのあったメーカーさんも取り扱わせてくれなかったりしたんですよ」

写真中央に映るのがオーナーの土屋さん。店内はところ狭しとULアイテムが並んでいる。

潮目が変わったのは2011年。舟田靖章さんが、日本人ではじめてトリプルクラウナー(※)になったのだ。そこからロングトレイルやウルトラライトの思想がメディアでも取り上げられるようになり、広がりをみせていく。
※アメリカ3大トレイル である アパラチアン・トレイル、パシフィック・クレスト・トレイル、コンチネンタル・ディバイド・トレイルをスルーハイクしたハイカーのこと。

「舟田くんが出てくるまでは、何ヶ月もかけて何千キロを歩くっていうのが想像できなかったと思うんです。でも日本人が踏破したことで風向きは変わりましたよね。舟田くんもうちの店によく通ってくれていましたから、お店の取材も増えて、お客さんも徐々に増えていったように感じます」

  • 壁面を埋め尽くす、驚くほど軽いバッグパックたち。容量やデザイン、価格帯もさまざま。

    壁面を埋め尽くす、驚くほど軽いバッグパックたち。容量やデザイン、価格帯もさまざま。

  • 機能性が高く軽量なウェアも種類が豊富。抗菌・消臭効果の高いメリノウールのアイテムも多い。

    機能性が高く軽量なウェアも種類が豊富。抗菌・消臭効果の高いメリノウールのアイテムも多い。

  • 「備えよ、常に」というボーイスカウトのモットーにあるように、道中のあらゆるトラブルに対応できるようなギアも装備すべし。

    「備えよ、常に」というボーイスカウトのモットーにあるように、道中のあらゆるトラブルに対応できるようなギアも装備すべし。

  • 各地のマップに加え、先人たちの言葉が綴られた名著も。苦しい場面で励みになるのは案外こういうものだったりする。

    各地のマップに加え、先人たちの言葉が綴られた名著も。苦しい場面で励みになるのは案外こういうものだったりする。

ロングトレイル文化とUL道具を古くから発信し続けているお店には、いろんなお客さんがやってくる。日本や世界のロングトレイルを歩きたいひとはもちろん、これからハイキングをはじめたいひと、一般的な登山で軽量化を測りたいひと、パックラフトやスノーシューなどの特殊なアクティビティがしたいひとなど。そのすべてに応えるべく「ハイカーズデポ」の商品群はとにかく幅広い。くわえて、長年営業しているからこそユーザーのフィードバックも膨大で、そうした経験者たちが認め、実績をつんだ「間違いない」道具が多いのも特徴的だ。

  • 上級者におすすめしたいのがこの2つのブース。写真左はこまかなパーツで、バッグをアレンジして使いたいときに重宝する。写真右は使い切りサイズの調味料やフリーズドライ食品など。

    上級者におすすめしたいのがこの2つのブース。写真左はこまかなパーツで、バッグをアレンジして使いたいときに重宝する。写真右は使い切りサイズの調味料やフリーズドライ食品など。

  • 調理器具も多数。手のひらサイズのバーナー類も種類が多い。食器や鍋などは、軽量で丈夫なチタンがおすすめ。

    調理器具も多数。手のひらサイズのバーナー類も種類が多い。食器や鍋などは、軽量で丈夫なチタンがおすすめ。

  • 「備えよ、常に」というボーイスカウトのモットーにあるように、道中のあらゆるトラブルに対応できるようなギアも装備すべし。

    「備えよ、常に」というボーイスカウトのモットーにあるように、道中のあらゆるトラブルに対応できるようなギアも装備すべし。

  • パックラフトやスノーハイクなど、ハイキングと相性がいいアクティビティのギアが並ぶ一角。このお店にいるだけで、冒険心がくすぐられる。

    パックラフトやスノーハイクなど、ハイキングと相性がいいアクティビティのギアが並ぶ一角。このお店にいるだけで、冒険心がくすぐられる。

日本にはULの専門店はいくつかあるが、ハイキングやロングトレイルにこれまで特化しているということであれば「ハイカーズデポ」の右に出るお店は少ない。これまで数々のロングトレイルを歩いた経験がある土屋さんの知識もまた、物選びの指針になってくれる。

実績十分。信頼できるアイテム5つ

  • 〈トレイルバム〉のバックパック

    ULハイクの先駆者であるレイ・ジャーディン。彼は自作のバッグを使ってロングトレイルを歩いた。そして、日本人で初めてトリプルクラウナーとなった舟田靖章さんは、レイが作ったバックパックをさらにアレンジして使っていた。それを元にして商品化されたのが〈トレイルバム〉のバッグパック。容量48リットル、重量516グラム。

    〈トレイルバム〉のバックパック ¥22,000
  • 〈ファイントラック×ハイカーズデポ〉のツェルト

    日本のアウトドアメーカー〈ファイントラック〉に「ハイカーズデポ」が別注したツェルト(簡易テント)。広々とした居住空間がありながら、その重量は378グラム。両者によるツェルトは定期的にリリースされてきたのだが、2年ぶりにカラーを一新。帆布のテントを模した色味で、ツェルト内は常に明るい。

    〈ファイントラック×ハイカーズデポ〉のツェルト ¥37,840
  • 〈ハイランドデザイン〉の寝袋

    なるべく荷物を少なくするのが定石のロングトレイル。だからこそ、ひとつで2役こなしてくれるジップオフパンツは、着替えをひとつ減らすことができる優秀アイテム。日中歩く際は動きやすいショートパンツ、気温が下がる夜はフルレングスのパンツとして。展開カラーはクリームイエローとサーモンピンクの2色。

    〈ハイランドデザイン〉の寝袋 ¥16,000
  • 〈ハイランドデザイン〉のジップオフパンツ

    なるべく荷物を少なくするのが定石のロングトレイル。だからこそ、ひとつで2役こなしてくれるジップオフパンツは、着替えをひとつ減らすことができる優秀アイテム。日中歩く際は動きやすいショートパンツ、気温が下がる夜はフルレングスのパンツとして。展開カラーはバターミルクとブルーベリーの2色。

    〈ハイランドデザイン〉のジップオフパンツ ¥16,500
  • 〈ソーヤー〉の浄水器

    ロングトレイル中、つねに安心安全な水にありつけるとは限らない。池や沼の水を飲まなければいけない場合もある。だからこそ浄水器はマストアイテム。〈ソーヤー〉の浄水器は市販のペットボトルのキャップ部分に取り付けるだけ。たったそれだけで、水の中に潜む有害な細菌を99.99999%除去してくれる。

    〈ソーヤー〉の浄水器 ¥4,950

「ハイカーズデポ」ではこのひとに聞け!

土屋智哉さん

土屋智哉さん

1971年生まれ、東京・練馬出身。大学時に探検部へ入部し、そこからアウトドアの世界に魅了される。2008年にジョン・ミューア・トレイルをスルーハイクしたのち、同年「ハイカーズデポ」をオープン。これまで国内外のロングトレイルを踏破し、その知識は国内屈指。聞いた質問にはなんでも答えてくれるロングハイク界の兄貴的存在。 著書に 『ウルトラライトハイキング』(山と渓谷社)がある。

INFORMATION

ハイカーズデポ

住所:東京都三鷹市下連雀4丁目15−33 日生三鷹マンション2F|地図
TEL:0422-70-3190
時間:12:00〜20:00
定休日:火曜日
Instagram:@hikersdepot

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