登山者が気をつけるべき毒キノコというテーマにしたものの、実際に知らないキノコを採って食べる人って相当イッちゃってると思うのだが……。
「アウトドアに関心がある人が、BBQ場などで間違って毒キノコを食べてしまったという話は聞いたことがあります」
そう教えてくれるのは、千葉県立中央博物館のキノコ博士である吹春俊光先生。しかしその辺に生えているキノコを知識のないまま食べる人が本当にいるとは……。「おれはアウトドア達人だぜ」的な発想なのか。たしかに食用、毒に限らずキノコに詳しい登山者がかっこよく見えるという側面はある。
「たとえば、キャンプ場でオオシロカラカサタケという毒キノコを食べてしまったという話があるんですが、それってめちゃくちゃ不味い毒キノコなんですよ。よく食べられたなと」
見栄っ張りな食べ方による事故もあるんではないか。要は非日常に居るからと言って調子にのるなという話である。さらにキノコは個体差がものすごくあるので、素人判断は危険。まるでシメジのような形のものが、実は毒を持っていることも多々あるのだ。
「それこそ毒キノコって意外とたくさんあるんですよ。全体の1割程度は毒キノコ。日本には2500種くらいの名前がついたキノコが知られていますが、約200から300種が毒キノコ。死んでしまう猛毒のものも全体の約1%くらい存在します。100本に1本程度。また地域や森の植生によってもぜんぜん違います。そもそも日本産のキノコの約3割程度しか名前がついていない。そのへんにある大形のものでも、7割程度は名無しのキノコの可能性があるのです。だから今回挙げさせてもらった毒キノコは、信越トレイルなどを参考にブナ林縛りにしてあります」