最後は美しいブナ林を下って行く。ブナではじまりブナで終わる、素晴らしいトレイルだ。
トレイルを歩き終え、帰路で利用するデマンドタクシーの待ち時間。ベンチに寝転がりながら、編集柴山に初トレイルの感想を聞いてみる。ってか、ブヨ刺されハンパないじゃん! 短パンで歩くからだよ。
「痒いを通り越して、痛いですけどね(笑)。荷物も重いし、最初はかなりキツかったです。でもゆっくり歩くことで、普段気にもとめないものにも目が行くようになって、発見ばかりの3日間でした。トレイルランでよく行く高尾山は走るものだと思ってましたが、今度はゆっくり歩いてみようかな」
帰路のクルマはあっという間に今日歩いたのと同じくらいの距離を進んでいく。でも、トレイルを歩いた後だと、ザマアミロとちょっと舌を出したくなる気持ちになる。同じ距離の移動だとしても、時間をかけた分だけその濃さは段違いだ。
アメリカのネイチャーライターであるエドワード・アビーがこんな言葉を残している。
「歩くことはクルマなどに比べると時間がかかる。歩くことは時間を拡大し、人生を長引かせることなのだ。人生は短いのだから急いでも無駄なのだ」
そう、それこそがロングトレイル、徒歩旅行の魅力だ。
ロングトレイル経験者に話を聞くと、ほとんどすべてのひとが発する言葉がある。
「できることならずっと旅を続けていたかった」
これには強く同意する。2泊3日でも旅の終わりが物悲しいのだから、これを数ヶ月続けたスルーハイカーの寂しさは想像を絶するものがある。