熊やばいよ!

HANG OUT VOL.1 LONG TRAIL

熊やばいよ!

山はたのしいけど、危険もいっぱい。そ
のひとつが熊。熊に襲われたら大けがの
リスクがある。でも、今年100周年を迎
える木彫り熊という伝統だってあるし、
そもそも熊はもともと自然にいるもの。
駆除じゃなく共存について考えたり、熊
に敬意を持って山をもっとたのしんで。

Chapter 05

2024.09.06

Photo:Nahoko Suzuki(still)

Text:Takashi Sakurai

Edit:Yusuke Suzuki

HANG OUT VOL1
Chapter 05 | Be Ware of Bear

ベアドッグという共存のための選択。

クマも人も守る。日本、いや世界でも先駆的な取り組みをしている場所がある。長野県・軽井沢町。その軽井沢町から委託を受け、特定非営利活動法人「ピッキオ」がおこなっているのが、クマと人との共存プロジェクトだ。その中心となるのがベアドッグの存在。

ベアドッグとは、クマの気配や匂いを察知するための特別な訓練を受けた犬のこと。大きな声で吠えてクマを追い払ったり、敏感な嗅覚でクマの移動経路を特定することができる。このベアドッグの働きを中心に、軽井沢町では永らく、駆除だけに頼らない、クマと人間の共存の道を探っている。

クマとの共存は可能なのか? ベアドッグのハンドラーである田中純平さんに、そのあたりについて話を伺う。まずは、最近の報道でよく言われているように、本当にクマは危険なのか? というところから。

ロングトレイルにかぎらず、自然の中を頻繁に歩いていると、クマに接近・遭遇することはごく稀にある。出会わない、ということが、共存の近道だという。

「これは大前提なのですが、クマは人間を捕食するために襲ってくる種ではありません。だから、事前にクマのほうに察知してもらうことが大切です」

その代表格が音を発するものを身につけること。クマ鈴と呼ばれるものが有名だが、その他にも自分の声、手の平を叩く、など自分の存在をアピールする。単独ではなく複数人で行動することも有効だ。

「クマは臆病かつ慎重な生き物です。わたしたちの活動のなかでは、クマに接近する必要が生じることもあるんですが、細心の注意を払って、そっと近づいたとしても、先に察知されて逃げられてしまうことがほとんどです」

ピッキオでは、ロシアとフィンランドの国境地帯を原産とするカレリアン・ベア・ドッグという犬種が活躍中。吠える声の大きさや迫力が、熊に対し適しているとのこと。犬は人との親善大使というほど、深い絆で結ばれている。

もし熊に出会っても落ち着いた行動を。

ただしクマは個性が強い生き物なので、すべてを一緒くたに考えることはできない。特に登山者などが歩く場所は、国立公園や鳥獣保護区であることが多い。つまりクマからしてみたら、猟師などに追われる心配がないエリア。そうなるとじょじょに人間を脅威と感じず、慣れてくるクマもごく稀にではあるが、出てきている。

「ただ、たとえ人慣れしたクマであっても対処方法さえ間違わなければリスクを回避することができると思っています。事故になるパターンというものがあって、人間がパニックになる、あるいはクマをパニックにさせてしまうというのがもっとも危険です。基本的には自分の来た道を戻れるのであれば、そっと戻る。なるべく近寄らないことですね。親子グマの場合はとくに子グマに近づかない。単独のクマで距離がある場合には、少し声を出すとか、手を叩くなど、強すぎない刺激を与えるのが良いと思います」

他にも、テント場での食糧管理をしっかりすることや、食べ残しの汁などを流さないなど、トレイルを歩く人間が気をつけるべきことは多い。おいしい物を持っている存在=人間というように、クマが学習してしまわない工夫が必要だ。アメリカの多くのロングトレイルでは、ベアキャニスターという頑丈なケースに、食糧含め、匂いを発するものはすべて入れ、就寝時にはテントから離れた場所に保管することが定められている。

熊に取り付ける発信器は、市販のものを1台1台カスタムして首輪型にして使用。1台の重量はおよそ300グラムで、使用できる期間はおよそ3年間ほど。

ハードとソフト、軽井沢町ならではの活動。

適切な距離を保つこと。それがクマと人間の共存の鍵だ。そのために田中さんはベアドッグとともに軽井沢の森へ向かう。

「多角的に取り組む必要があると思っています。駆除だけでは解決しないんです。山に入る人はもちろん、里の人もみんなで取り組んでいかなければならない問題です」

そのためにピッキオでは、罠で捕獲したクマに電波発信器を取り付けて行動を追跡。そのパターンを読むことで、問題を起こしそうな個体にあらかじめベアドッグによる追い払いをおこなう。

「クマは頭のいい動物なので、人間の近くに行くと怖いことがあるということを学習させてあげれば、近寄ってこなくなるんです」

その一方で、ゴミ集積所のゴミ箱を、クマが開けられないような頑丈なものに変えたり、藪の刈り払い、クマ情報看板の設置など、クマが人の生活域にやってこないような仕組み作りもおこなっている。そういったハード面だけでなく、ソフト面も重要だという。

「クマをいたずらに恐れるのではなく、しっかりと知識を持って、万が一遭遇した際にもパニックにならないこと。だから小学校での教育活動や、次世代の人材育成にも力を入れています。総合的に対策することが大切です」

こうした田中さんらの活躍もあって、多数のクマが生息するエリアなのに、軽井沢町では人間の活動エリアにおいて、クマによる人身事故は13年間起きていない。話を聞いていくと、最近のクマ報道もちょっと煽りすぎだと感じる。一時期より個体数は増えているというが、九州では絶滅宣言がなされ、四国では絶滅が危惧されているのだ。

事故が起こったら、駆除すれば良いと言うのはちょっと人間都合すぎるし、下手をすれば絶滅の可能性もある。人によって生息域を脅かされているクマは、ある意味被害者なのだ。

PROFILE

特定非営利活動法人ピッキオ 田中純平

特定非営利活動法人ピッキオ 田中純平

北海道知床国立公園のヒグマ対策職員を経て、北海道大学大学院で大型野生生物の分野で修士課程を修了。2001年にピッキオの職員となった後は、軽井沢町を拠点にクマ対策に心血を注ぎ、日本初のベアドッグハンドラーとして活躍している。
npo.picchio.jp

木彫り熊の世界へようこそ。

木彫り熊と聞いて、鮭を加えた姿の北海道土産が頭に浮かんだ人が多いのではないでしょうか? でも、今年は木彫り熊生誕100周年の記念すべき年であるように、それはひとつの入り口にしかすぎなくて、その先には奥深い世界が広がっている。知っているようで知らない、木彫り熊の世界へようこそ。

  • 佐藤憲治 作 ¥71,500

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  • 佐藤憲治 作 ¥39,600

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  • 佐藤憲治 作 ¥68,200

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  • 佐藤憲治 作 ¥51,700

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  • 佐藤憲治 作 ¥143,000

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  • 佐藤憲治 作 ¥99,000

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  • 佐藤憲治 作 ¥297,000

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  • 佐藤憲治 作 ¥88,000

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  • 佐藤憲治 作 ¥93,500

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  • 佐藤憲治 作 ¥154,000

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  • 佐藤憲治 作 ¥55,000

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手作りならではの、すべてがワンアンドオンリー。

木彫り熊を常に数多く置いているお店は、調べてみると想像以上に少ない。そんななか関東、いや全国で屈指のラインナップを誇るのが黒磯の「ルームス」。店内は国内外から買い付けてた古道具などがところ狭しと置かれ、奥へ進むと壁一面に木彫り熊だらけの空間が。店主の川瀬真吾さんが集めるヴィンテージから作家による最新のものまで、大きさや形などさまざまな木彫り熊がディスプレイされた光景は、まさに圧巻の一言。

特に北海道の旭川で活動する現代作家の佐藤憲治さんの作品がこれだけ多く揃うお店は、日本でも「ルームス」くらいだろう。数年前、川瀬さんが旭川まで足を運びお店で取り扱いたいと話したところ、最初は門前払い。この時点で心が折れる人もいるだろうが、「1回行っただけで取り扱えるなんて、逆にだれでも1回行けばいいってことだから、その後何度も通いました(笑)」とケロッと言ってしまうところに、こちらの背筋が伸びずにはいられない。佐藤さんの2024年製の作品にはすべて“53/100”と彫られており、シリアルナンバーかと思ったら「木彫り熊の100年の歴史のうち、佐藤さんは53年間彫り続けているという意味ですよ」という話はまさにプライスレス。

オールドスクールなテイストから、バスケットボールを持ったりスキー板を履いたりしたものまで、その柔軟な発想からも巨匠としての懐の深さを感じるはず。写真からもその魅力は伝わるだろうけど、やっぱり生で見て直に触れるのはスペシャルなこと。それに木彫り熊からロングトレイルの世界へ、なんてルートもなしじゃないのでは?

  • 1962年製のヴィンテージ ¥6,050

    1962年製のヴィンテージ ¥6,050

  • 1936年製のヴィンテージ ¥84,700

    1936年製のヴィンテージ ¥84,700

  • 1961年製のヴィンテージ ¥5,500

    1961年製のヴィンテージ ¥5,500

  • 賀上隼敬 作 ¥50,380

    賀上隼敬 作 ¥50,380

  • 北海道製 ¥56,950

    北海道製 ¥56,950

INFORMATION

ROOMS

ROOMS

住所_栃木県那須塩原市高砂町1-9

TEL_0287-64-5650

営業時間_12:00〜18:00

定休日_不定休

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HP_rooms-ifs.com

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