クマも人も守る。日本、いや世界でも先駆的な取り組みをしている場所がある。長野県・軽井沢町。その軽井沢町から委託を受け、特定非営利活動法人「ピッキオ」がおこなっているのが、クマと人との共存プロジェクトだ。その中心となるのがベアドッグの存在。
ベアドッグとは、クマの気配や匂いを察知するための特別な訓練を受けた犬のこと。大きな声で吠えてクマを追い払ったり、敏感な嗅覚でクマの移動経路を特定することができる。このベアドッグの働きを中心に、軽井沢町では永らく、駆除だけに頼らない、クマと人間の共存の道を探っている。
クマとの共存は可能なのか? ベアドッグのハンドラーである田中純平さんに、そのあたりについて話を伺う。まずは、最近の報道でよく言われているように、本当にクマは危険なのか? というところから。
ロングトレイルにかぎらず、自然の中を頻繁に歩いていると、クマに接近・遭遇することはごく稀にある。出会わない、ということが、共存の近道だという。
「これは大前提なのですが、クマは人間を捕食するために襲ってくる種ではありません。だから、事前にクマのほうに察知してもらうことが大切です」
その代表格が音を発するものを身につけること。クマ鈴と呼ばれるものが有名だが、その他にも自分の声、手の平を叩く、など自分の存在をアピールする。単独ではなく複数人で行動することも有効だ。
「クマは臆病かつ慎重な生き物です。わたしたちの活動のなかでは、クマに接近する必要が生じることもあるんですが、細心の注意を払って、そっと近づいたとしても、先に察知されて逃げられてしまうことがほとんどです」