HANG OUT VOL.5

In Love with the GOD OF SPEED.

Chapter 05

2025.1.22

Photo:Yuta Kinpara

Text:Yusuke Suzuki

Edit:Yusuke Suzuki

HANG OUT VOL.5

HANG OUT VOL.5In Love with the GOD OF SPEED.

ヴィンテージバイクでサーキットを駆ける。

平日は会社と家を行ったり来たり。休日は家族と一緒に過ごしたり、たまにひとりでのんびりなんて日もあるけど、同じように過ぎていく毎日じゃ味気ない。いいこともそうでないことも忘れて、頭が真っ白に夢中になるようなことがしたい。そう、だったらバイクでレースに出るなんてどうだろう? しかもヴィンテージのバイクで。求めるのはスピードとロマンだけ。

Chapter 05 | In Love with the GOD OF SPEED.

速いやつがすごい、ただそれだけ。

バイクにとってレースは花形。サーキットという舞台でコンマ1秒を競い合い、マシンと対話しながら自分自身を更新し続ける世界は、タイムと順位という偽りのない数字がすべて。社会でも数字は評価基準のひとつだけど、それと同じかそれ以上に人間関係だったり数字に表せないものごとが重要とされたり。でもレースはシンプル。速いやつがすごい、ただそれだけ。

さまざまなレースのジャンルがあるなか、ハングアウトがおすすめするのはヴィンテージバイクで走る、A.V.C.C.(American Vinatge Competition Clubman Roadrace)というアメリカ製のモーターサイクルによるロードレース。

A.V.C.C.(American Vinatge Competition Clubman Roadrace)

1996年にスタート。現在は静岡の「富士スピードウェイ」と茨城の「筑波サーキット」にて、1年で3回レースを開催する。

HP https://www.avcc1996.com

  • 真剣勝負が繰り広げられるサーキットの緊張感は、観戦するひとにも間違いなく伝わるもの。電気自動車などが台頭する令和の時代に、ヴィンテージバイクの、しかもレーサーを目にする機会は特別です。

    真剣勝負が繰り広げられるサーキットの緊張感は、観戦するひとにも間違いなく伝わるもの。電気自動車などが台頭する令和の時代に、ヴィンテージバイクの、しかもレーサーを目にする機会は特別です。

レースのクラスはモデファイド-A、モデファイド-B、ストック-A、ストック-Bの4つに、FSCRとCSSCがある。“出走車両は一般公道を安全に走行できる状態であり、そこから保安部品を取り外した状態をAVCCレーサーとする”“服装は皮革製のレーシングスーツ、グローブ、ブーツは身体に合ったもので安全を確保できるもの”などの各クラス共通以外に、それぞれのレギュレーションが設定され、それにクリアしたレーサーのみエントリーすることができます。

メカニックとレーサーの二人三脚で。

およそ50年以上前に製造された〈ハーレーダヴィッドソン(HARLEY DAVIDSON)〉や〈インディアン モーターサイクル(INDIAN MOTORCYCLE)〉に手を加えられたレーサーが、令和の時代にサーキットを駆ける光景は非日常そのもの。メカニックとの二人三脚でバイクを走らせるレーサーと五感が刺激される感覚は、経験したひとにしかわからないものです。

  • 2024年ラストの11月に「筑波サーキット」で開催されたレースでは、アメリカを拠点に活躍する「ブラットスタイル(BRATSTYLE)」の高嶺剛さんが一時帰国し、INDIAN 1937 Sport Scoutでの参戦がホットトピックス。750ccのエンジンで4位フィニッシュは流石の一言!

    2024年ラストの11月に「筑波サーキット」で開催されたレースでは、アメリカを拠点に活躍する「ブラットスタイル(BRATSTYLE)」の高嶺剛さんが一時帰国し、INDIAN 1937 Sport Scoutでの参戦がホットトピックス。750ccのエンジンで4位フィニッシュは流石の一言!

レーサーはそれぞれのレギュレーションの範囲内で、キャブレターの調整やステップの位置&長さ、ハンドルのポジションなど細かなセッティングを行います。すべてはコンマ1秒でも速く走る、ただそれだけ。そんなシンプル・イズ・ベストな世界では、それ以外のことを考えたり思い浮かべる時間はありません。

  • HARLEY DAVIDSONとINDIANのサイドバルブモーターを積んだレーサーが疾走する光景は、はるか昔のサーキット場にタイムスリップしたかのような感覚に。A.V.C.C.でしか体験できない、スペシャルそのものです。

    HARLEY DAVIDSONとINDIANのサイドバルブモーターを積んだレーサーが疾走する光景は、はるか昔のサーキット場にタイムスリップしたかのような感覚に。A.V.C.C.でしか体験できない、スペシャルそのものです。

正直、時間とお金はかかるレースの世界。けれど、1度足を踏み入れて得られる経験は他では代えられないもの。ラストは2017年から8年間、A.V.C.C.に参戦し続けるTOKYO INDIANSの船水猛さんにレースについてあれこれ聞いてみました。

街を走ることとサーキットを走ることはまったくの別もの。

船水猛

青森県出身・東京都在住。店舗やマンションリフォームの内装工事現場管理を行う「WARLOCK」の代表であり、インディアン乗りオンリーの“TOKYO INDIANS”のメンバー。多忙な仕事とバイク以外では、息子の野球が1番の関心ごと。

Instagram @indy47

HP https://warlock.jp

ー船水さんはAVCCでどのクラスに出ていますか?

船水:900ccなのでモディアファイド-Bですね。ベースは750cc(のエンジン)なんですけど上げていて。

ー1947年式と1953年式のインディアン・チーフも所有されていて、レースは1948年に1年間だけ生産された貴重なビッグベースのファクトリーレーサーですよね。ビッグベースはレースに出るために手に入れたのでしょうか?

船水:そういうつもりではなかったんですけど、(ビッグベースは)やっぱりレース以外にないかなと思って。

貴重な1948 INDIAN 648 BIG BASE SCOUT。手に入れてからほぼすべてに手が加えられていて、アイコニックなタンクとフェンダーのペイントは親交の深いLOVE EAR ARTによるもの。

ーもともとロードレースに出たいという気持ちはありましたか?

船水:昔から出たかったし、憧れって感じでしたね。

ーいざレースに出ようとしたら、バイク以外になにを準備しましたか?

船水:ツナギですね。菜有さん(注:TOKYO INDIANSを主宰する島菜有。生粋のインディアンラバー)にデザインしてもらったものを〈カドヤ(KADOYA)〉でオーダーして。安い買いものじゃないので、ツナギをちゃんと着れるように筋トレしておなかが出ないようにとか気をつけるようになりましたね(笑)。

ーたしかにレザーのツナギだと体型が変わってしまったら入らなくなりますし、体型をキープして健康でいるって思わぬ副産物的な感じですね(笑)。はじめてサーキットを走った時のコース取りとかはどうしたんですか? 予選がぶっつけ本番だったんですか?

船水:そうそう(笑)。基本的な(コーナーに)アウトから入ってインからのアウトで出るみたいなのが頭に合っただけで、もうハチャメチャですよ。速いひとの後ろで走り方を見たいけど、(先にいきすぎて)姿が見えないですからね。タイムもメーターで見ることはできるんですけど、1回も見たことないんですよ。

ーえっ、なんでですか?

船水:もう熱くなっちゃって忘れちゃうんですよね、メーター見るのを(笑)。

ー20年以上ヴィンテージバイクに乗っていても、レースだとそんなになっちゃうんですね(笑)。

船水:やばい、もう快感がやばいっすね。

バイクに取り付けられたカメラで見る、実際に走っている時の目線。サーキットのラインどりやブレーキをかけるタイミング、もちろんエンジン音などの映像でしか伝わらない臨場感などを、ぜひチェックしてみてください。

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