自作の器と生活しよう。 自作の器と生活しよう。

HANG OUT VOL.5 POTTERY

自作の器と生活しよう。

デジタル化が進む中で、手を使ったアナログな作業が今、再評価されている。特に手工芸は、手作りならではの温かみや独自性があり、大量生産品とは異なる価値を感じる人が増えているようだ。なかでも陶芸は、集中力が求められる作業。粘土を成形する過程は、日常のストレスを軽減し、リラックスできる趣味としても注目されている。そんな陶芸を暮らしに取り入れれば、ものづくりの楽しさとともに、新たなライフスタイルが開かれるはず。さあ、陶芸をはじめよう。

Chapter 02

2024.12.30

Photo:Masashi Ura

Text:Shoko Matsumoto

Edit:Daiki Yamazaki

HANG OUT VOL.5
Chapter 02 | LET'S LIVE WITH YOUR OWN POTTERY.

世界にひとつだけのオリジナル器。

陶芸は、自分でデザインした器やオブジェを作れることが、他の趣味とは異なる大きな魅力。現在、陶芸教室やワークショップが全国で増えており、初心者でも気軽に体験できる環境が整っているようだ。それでは、形や色など唯一無二で他にはないアイテムを、実際に作ってみよう。

INFORMATION

studio knot ceramics

studio knot ceramics

住所_東京都渋谷区上原3-4-1 PATH YOYOGIUEHARA 103

TEL_03-6416-8118

ホームページ

今回教えてくれた先生

下地ひとみさん

下地ひとみさん

大阪芸術大学工芸学科卒業後、茨城県立笠間陶芸大学校で陶芸を学び、studio knot ceramicsの講師に。自身の作品の作陶を並行しておこなっている。

  • 粘土を奥から手前に持ってきて押し出す。90度に向きを変え、同じ作業を繰り返す。粘土を縦長に置き、下部を手のひらで押し出しながら、全体を回転させて練る作業を繰り返す。
  • 粘土の形が菊の花びらのような模様になるまで前の作業を繰り返す。
  • 最後に粘土を丸くまとめ、空気が粘土の中に残らない状態にする。今回は特コシという粘土を450g使用。きめが細かく癖が少ないので扱いやすく使い勝手がいい。素焼き前はグレー地だが、焼き上がると白色に近いアイボリーに変化する。

STEP1 陶芸は土作りが命。

陶芸の作業の中で肝となるのが土づくり。菊練りは粘土を扱いやすくするための練り方で、粘土の中の空気を抜き、密度や柔らかさなどを均一にする。

  • 手回しろくろの真ん中に粘土を置き、固定する。高台(器の裏側についている輪っか。器を支え、器の姿を美しく見せ、熱が直接伝わらないようにする役割がある)を残しながら、底に貫通しない程度に親指で粘土に穴をあける。
  • 見込み(平らな底面)をイメージしながら、広げたい大きさまで親指で少しずつ広げていく。
  • 手は倒さずに、立てて粘土をつまんでいくことで、上方に粘土を広げていくことができる。
  • 器の大枠の大きさや形が完成。

STEP2 手回しろくろで理想の形に。

作業台で肱を固定し、手の位置は動かさずに動きは同じにするのがポイント。大きさや形は力加減で形成する(指の力を外側を強くするとすぼまり、内側を強くすると広がる)。

  • 粘土の外側に手を添えながら、コテ(木製の小道具。形を整えたり、表面を滑らかにする時などに使用)で内側の土をならす。
  • ニュアンスを残しながら口あたりをなめらかにするために、なめし皮を濡らし、親指と人差し指で口を挟みながら、手まわしろくろを時計回りにまわす。
  • 両親指で切り糸をピンと張り、指を天板から離さないように奥から手前に引っ張って、粘土を手回しろくろから切り離す。
  • 最初に作った見込みのサイズをチェックしながら、はりで高台のラインを引く(レコードに針を落とすイメージで)。
  • 高台を残しつつ、厚みを確認しながら、余った部分をかんなで少しずつ削る。
  • 高台に自分のサインを入れて完成。

STEP3 細部のニュアンスを整える。

手びねりの特徴のひとつに、指のあとや、アンバランスな形などがある。それが独特な味を生み出したり、逆に手に持つとき馴染んだりもする。作る人の個性を表すものなので、整え方は好みでいい。

  • 釉薬は陶磁器に融着したガラス質の層のことで、上薬(うわぐすり)とも呼ばれる。 装飾のひとつでもあるが、素地にかけて焼成することで、防水効果や汚れが付きにくくなる役目もある。studio knot ceramicsでは11種類のなかから好きな釉薬を選べる。

形はこれで完成!

ワークショップでの作業はここまで。このあと、studio knot ceramicsに預け、数日間乾燥させた後、素焼き、釉薬をかけて本焼きまでをおこなってもらう。

STEP4 早速生活に取り入れよう!

1.5〜2ヶ月ほどで、本焼きまで終えた器が手もとに。手作りならではの温かみや個性が表れた器は、いつものコーヒータイムを、なんだか特別な時間に変えてくれそうだ。作ったときの思い出やエピソードが詰まっているから、使うたびに愛着が増していく。シミや傷すらきっとかわいらしい。単なる道具としてではなく、スペシャルなアイテムとして、ともに時を重ねていくのもいいだろう。

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