加藤忠幸の脳内インデックス。
<う>裏
7回目のテーマは「裏」。裏といえばこれまでに加藤さんが手がけた、〈ヴァンズ(VANS)〉や〈ポーター(PORTER)〉、〈シーイー(C.E)〉を裏返しにしたものなどがありましたね。
そうです。それを「裏〇〇」と名付けていたんです。なので今回のテーマは「裏」。
そもそもの着想源はスケーターカルチャーなんでしょうか?
服を裏返しに着てスケートを楽しんで、もし汚れてしまっても表面はきれいなままだからそのまま街にいけちゃう、というアレですよね? そういうアメリカのスケーター達をかっこいいなとは思っていたんですが、つくろうと思ったきっかけは実は別にあるんです。
てっきりそれがルーツなのかと。きっかけを教えてもらってもいいですか?
ヒトもモノも、裏表があることって良くないじゃないですか。外面だけが良いヒトってかっこ悪いでしょ? おれはやっぱりどっちもが良いことに惹かれるんです。ものづくりにおいて言うと、見えない部分まで手を抜かずにつくり込まれている方がいいじゃないですか。そういうのを感じていたので、だったらその裏の部分を表にしたらおもしろいんじゃないか、と思ったのがきっかけですね。
加藤さんらしい考え方ですね。
自分がものづくりするときや、コラボをさせてもらうときに、自分がおもしろいのはもちろんだけど、相手側にとってもプラスになるものづくりをしようっていつも考えるんです。じゃあ裏も見せた方がいいじゃんって思っちゃったんですよね。
いい意味での違和感もありますしね。
そうそう、そのギャップがいいんだよね。コーディネートもあえて外すみたいなおもしろさってあるじゃないですか。でもその外し加減こそがセンスというかさ。そんな考えのもとまず最初につくったのが〈ヴァンズ〉でした。
すんなりOKってでるもんなんでしょうか…?
でなかった(笑)。結果的に「スリッポン」をベースにつくったんですけど、最初は「オールドスクール」で打診したんです。なぜかというと、その方が裏返したときのギャップがあると思ったから。裏側がより複雑そうじゃないですか。だからこそおもしろいと思って。
ブランド側からしたら、「なんでわざわざ裏返すの…?」ってことですよね。
そのとおり(笑)、だからダメでした。でもそのタイミングくらいで〈ヴァンズ〉のアートショーがあって、そのイベントでなにか作品をだしてくれないかって依頼があったんです。これはチャンスだと思いました。実際にサンプルができれば、もう一度交渉できるぞ、と。なので、アートショー用のシューズで「オールドスクール」を裏返しにしたものの作成を依頼して展示したところ、やっぱりウケが良くて。いろんなひとが「これ、ヤバいね」って言ってくれたんです。
それは、商品化への大きな一歩でしたね。
そこからさらに行動を続けました(笑)。「ビームス」の内覧会でその「裏オールドスクール」を、さっき話した”いいものは裏表がない”といったコンセプトとともに展示したんです。で、”商品化への道”とも書いて、いろんなメディアの方に向けて署名運動も実施。すると、たくさんの方が「おもしろい!」と協力してくれて、それを持って「ABCマート」さんへ行ったんです。「こんなにも多くのメディアが賛同してくれてます」って。
その結果は…?
条件付きでOK! その条件が「オールドスクール」ではなく「スリッポン」であれば、ということだったので、最初の「裏ヴァンズ」は「スリッポン」がモデルになったんです。
そういう経緯があったんですね。
そしてうれしいことにそれが本当に好評で! だから、第二弾で黒の「スリッポン」をつくって、とうとう最初にやろうとしていた「オールドスクール」まで実現することができました。
そして次に〈ポーター〉ですね。
「裏〇〇」って、表が“誰もが知るもの”じゃないと成立しないんですよ。定番のイメージがあるからこそ、“裏の異質感”が際立つので。そういう意味では、〈ポーター〉といえば大体のひとの頭のなかにイメージがあるから、裏返し甲斐がありました。あの裏地のオレンジが表に見えたら絶対かっこいいって思ってたのもありますけど。
このオレンジが見えたら“裏側だ”って思いますもんね。
デザインとしても目立ちますからね。でもこれまでに裏返して販売していたのは、当たり前ですけど見たことがなくて。そういうのを見つけては、おもしれぇなと思ってやるのが好きですね。
そして〈シーイー〉と続くわけですね。
〈シーイー〉を持ってるひとは知ってると思うんだけど、そもそも裏にでっかいグラフィックがプリントされてるんですよね。しかも自分がめちゃくちゃ好きなブランドのひとつってこともあって、これは裏返さないわけにはいかないよな、と。
「裏〇〇」は服から始まったと思いきや、シューズ、バッグに続いて、服だったんですね。そこも、あえて裏の想像がしづらいものからスタートさせるところが加藤さんらしいです。これからもこのシリーズは続けていく予定ですか?
最後の「裏シリーズ」が〈シーイー〉で、それが2018年。結構空いちゃってるんだよね…。でも実はこっそりと進めているプロジェクトがあって。
それは聞いてもいいんですか?
まだ言えません(笑)。が、めちゃくちゃいいものができる予感がしているので、楽しみにしていてもらえるとうれしいです!
BEAMSバイヤー / SSZディレクター
1973年生まれ、神奈川県出身。大学卒業後にビームスに入社し、販売スタッフを経て2012年よりSURF&SK8部門のバイヤーを担当する。2017年には、自身のブランドである〈SSZ〉をローンチ。加藤農園の4代目として鎌倉で野菜を育て、4日に1度は市場で販売も行う。