スタイルの履歴書。小林節正 #5

Text: Kenichi Aono

Edit: Yusuke Suzuki

REGULAR

ファッションでも音楽でもスポーツでも、どんなジャンルもその人にしか出せないスタイルがある。“Style is Everything”。そう、だれかが言った、スタイルがすべて。『スタイルの履歴書』は、文字通りスタイルのある大人へのインタビュー連載で、毎週月・水・金曜更新。第15回目に登場いただくのは、〈. . . . .RESEARCH〉代表であり、アウトドアからカスタムバイクまで、まさに我が道をいくスタイルを貫く小林節正さんです。

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05. 日本の靴づくりに対する危機感を抱き帰国。

 一応、靴工場の息子だから、イタリアでも彼らが何をやっているかはわかる。でも全然違うんですよ、浅草の実家で見てきたものと。職人たちはみんなファッションのなんとなくの動向は知ってるし、ファッション的なリテラシーの高さにはびっくりしました。日本の工場だとファッションの話なんて通じませんでしたからね。彼らが働く工房の環境の良さにも驚きました。そもそも空気感が全然違うし。この差はいったいなんなんだ?と。それで「ファッションの世界と互角、あるいは使いものになるような靴屋側の人間にならないと」という思いが芽生え、帰国の決心をするんです。 

 〈COMME des GARÇONS〉などのショー用の靴をつくりながら自社ブランドも持ち、年に1回レザーウエアも発表していた会社の門を叩くのは帰国してまもなくのこと。一度は「ひとは足りている」と断られたんですが、1ヶ月ほどしてから懲りもせずに再び連絡したらちょうど空きが出て入社できることになりました。

 3人しかいない小さな会社で、入って1年目からいろいろなブランドとの打ち合わせにも同席していましたね。ちょうど日本のファッション業界がわさわさしはじめたころ。ボウヤの分際でいろんなブランドの大御所デザイナーから話を直接聞けたのはかけがえのない体験でした。

 俺が入ってからは工場の編成をやり直して、父親の知り合いのメンズの工場なんかで生産してもらうようにしたんです。あの頃の浅草のひとたちって、知っている人間が依頼しないと、ことがスムースに進まないものだから(笑)。

  • 小林さんが1999年にオープンした「WIN A COW FREE」の跡地に、2002年に“自由”をテーマに松浦弥太郎さんと共にオープンした「COW BOOKS」。単に本を売るだけではなくて、古本をセレクトた上でひとが集まるサードプレイス的な本屋として、20年以上中目黒の名店のひとつとして多くの人々が足を運び続けています。

    小林さんが1999年にオープンした「WIN A COW FREE」の跡地に、2002年に“自由”をテーマに松浦弥太郎さんと共にオープンした「COW BOOKS」。単に本を売るだけではなくて、古本をセレクトた上でひとが集まるサードプレイス的な本屋として、20年以上中目黒の名店のひとつとして多くの人々が足を運び続けています。

Profile

小林節正(. . . . .RESEARCH〉代表)

1961年1月生まれ、浅草出身。〈. . . . .RESEARCH〉代表。山の〈マウンテン リサーチ〉やカスタムバイクの〈R.E.R〉こと〈ライディングエキップメント・リサーチ〉の展開、さらに2021年にオープンしたキャンプ場「水源の森 キャンプ・ランド」をプロデュースし、不定期で「ANARCHO MOUNTAINEERS」と題したイベントも開催。街も自然も、自由に行き来し自由に楽しむ姿勢は、多くのファンの心を掴んで離しません。

インスタグラム @anarchomountaineers009

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