海外はやっぱり景色がちがうね。<br>
Vol.3 カミーノ・デ・サンティアゴ(スペイン) 海外はやっぱり景色がちがうね。<br>
Vol.3 カミーノ・デ・サンティアゴ(スペイン)

HANG OUT VOL.1 LONG TRAIL

海外はやっぱり景色がちがうね。
Vol.3 カミーノ・デ・サンティアゴ(スペイン)

自由気ままに旅することがロングトレイルの魅力なら、海外で歩く道のりでは、一層の開放感を味わえるだろう。日本にはないダイナミックな地形を、異文化に触れながら旅する。トレイル経験豊かな3人の話を聞くと、海外もいいなって思えてきた。

Chapter 04

2024.09.02

Text:Takashi Sakurai

Edit:Suzuki Yusuke
Hideki Shibayama

HANG OUT VOL1
Chapter 04 | Long trails overseas

PROFILE

上沢勇人さん / Goldwin Inc. マーケティング部

上沢勇人さん / Goldwin Inc. マーケティング部

カミーノ・デ・サンティアゴを踏破後、2019年にGoldwinに入社。その後、トレイルランニングなどもはじめ、つぎなる目標はMt.FUJI 100の完走。トレイル歩きも続けていて、来年はスウェーデンのロングトレイル、クングスレーデンを歩く予定。

03. カミーノ・デ・サンティアゴ(スペイン)

The Camino de Santiago is a pilgrimage route that has continued since the Middle Ages. In 1993, it became the first route in the world to be registered as a World Heritage Site. There are several routes, including the French Route, the Northern Route, and the Ancient Route, but the one that Uesawa Hayato walked was the "French Route," which is an 800-kilometer walk from the town of Saint-Jean-Pied-de-Baux in southern France to Santiago de Compostela.

旅の終わりであり、新しい旅の始まり。

ブエン・カミーノ。

カミーノ・デ・サンティアゴで1番よく聞いた言葉です。巡礼者同士の挨拶で「よい巡礼の旅を」みたいな意味ですね。

きっかけは「星の旅人たち」という映画です。カミーノ・デ・サンティアゴが舞台の映画で、息子を巡礼の道で亡くした父親が、その遺灰を持って歩く、という内容。ストーリー自体も素晴らしかったんですが、長い旅路をへて心境などが変化していくプロセスに興味を持ちました。

当時から旅には行っていたんですが、もっとローカルっぽい滞在をしてみたかったというのも大きな理由です。なおかつお金がぜんぜんなく、なるべく安くそういう旅ができる場所はないかなぁと探していたときでもあったので、手段として歩き旅を選んだ感じですね。

カミーノ・デ・サンティアゴに行くと決めてから、歩くトレーニングをはじめました。とはいえカミーノ・デ・サンティアゴはトレイル歩きだけでなく、市街地歩きも多い。当時は恵比寿で働いていたんですが、スカイツリーから恵比寿まで歩くというようなことをしていました。だいたい20キロくらいですかね。あとは陣馬から高尾までの14キロくらい。それが人生初登山です。

アウトドアをやっている知人もまったくいませんでしたから、まず道具の相談をできる人がいない。カミーノの情報を知っている人も当然いません。だから断片的な情報を繋いでいって、旅程を組み立てていった感じです。英語もしゃべれなかったし、準備段階では不安だらけでした。

一番きつかったのは初日です。ピレネー山脈を1日で越えなければいけなかったので、本当に苦行。いきなり「なんでこんなところに来てしまったのか…」という後悔に襲われました。冬期にピレネー越えをして亡くなるケースも多いらしく、かなり険しかったですね。冬の終わり、あえてオフシーズンに行ったのも影響したかもしれません。シーズン中だと学生も多いし、ちょっと観光っぽくなるという話も聞いていたので、ゆっくりと時間が流れる巡礼というのをイメージしていたぼくとしては混雑を避けたかったというのもあります。

トレイルといっても、林道のような場所が多く、市街地を歩くパートもかなりあります。800キロの行程のなかに大きい都市が5つあるんですが、そのうち2つは世界遺産。とても文化的な道でした。クレデンシャル(巡礼者パスポート)という日本のお遍路の納経帳のようなものもあって、スタンプを捺していけます。それがそのまま巡礼した証明になるんです。

歩いている人は敬虔なカトリックの人ばかりではないんですが、同じ試練を受けているという意味で、巡礼者同士の連帯感というのは強かったですね。セクションで歩く人もいるんですが、やはり800キロ組は特に仲良くなりやすかったです。

ちなみに道中で、水道からワインが出てくる名所があるんですけど、あれ、めっちゃ酸化してて美味しくないです(笑)。

この旅には実はオチがあって、ゴールする日のことなんですけど、道中で出会った2人と一緒に歩いていたんです。それで目的地であるサンティアゴに着いて大盛り上がりしてたんですが、事務所に証明書をもらいに行くタイミングになって、ぼくが前日泊まっていた宿にクレデンシャルを忘れてきていたことが判明したんです。急いで取りに戻ったんですけど、そのときには受付が終わっちゃってました…。

その後の巡礼者仲間の打ち上げにも参加したんですけど、ぼくだけ終わってないからなんだか乗り切れない(笑)。

翌朝に事務所に行って無事証明書をもらえて、そのまま大聖堂のミサに参加したんです。そこではその日巡礼を終えた人数を国ごとに読み上げてくれるんですけど、その日は日本人1人。ああ、ぼくのことだ、となんだか名前を呼ばれたみたいで感動しました。巨大な香炉を振り回すボタフメイロという儀式も見ることができたんですが、これは年に12回くらいしか行なわれないんです。だから、結果的にクレデンシャルを忘れたことも、怪我の功名でしたね。

実はサンティアゴに着いたあとも、スペイン西海岸のフィニステーラまで歩いたんです。だから正確には合計約1000キロ。ゴールしたときはいったん喜ぶんですけど、寂しさと物足りなさで、結局フィニステーラまで歩く巡礼者は結構多いんですよね。

帰って来てから、友人にもロングトレイルをオススメしていたんですが、なにが良いのか、というのは永らく言語化できていませんでした。わざわざ肉体的にしんどいことをしにいくわけですから。いま思うのは、長く歩くことで、地形、風土、気候などを肉体的リアリティを持って感じられること。その過程を尊く思えること。これは長く歩くことでしか味わえない経験だと思っています。

800キロ歩くと行っても、ようは20キロを40回歩くということです。これをどんどん増やしていけば、歩いてどこにだって行ける。当たり前といえば当たり前なんですが、地球はつながっているということを、帰ってきてから実感するようになりました。

道中で「アルファでありオメガである」という言葉をよく目にしました。これは「はじまりであって、終わりである」という神の全能性を表すキリスト教の言葉なんですが、サンティアゴの南門では「オメガでありアルファである」という言葉に変わっていたんです。「ここが終わりだが、新しい旅のはじまりでもある」。この言葉もあって、ゴールで閉じない経験だったなと、いま強く思います。

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