TECH FREAK - ギークな未来百貨。
Vol.4 FUJIFILM X-M5
2024年がもうすぐ終わる。今年も流行語が発表されたけれども、なぜか「2024年問題」が選ばれていなかったことに驚いた。この言葉は、働き方改革法案により、ドライバーの時間外労働時間が年間960時間に制限されたことを意味する。つまり、ひとりあたりの走行距離が短くなり、より人手が必要になるということだ。
ひとりでできることは限られる。そんなことを言われたような気がして、今回は思い切ってそのやり方を参考にしてみることにした。相手に選んだのは、この連載の撮影を担当しているフォトグラファーの内藤さん。話しているなかで、「〈フジフイルム〉の新製品でよさそうなカメラがあるんですよ」と教えてくれた。それがこの「X-M5」というエントリーモデルのミラーレスデジタルカメラだった。
カメラを箱から取り出す際に手で持つと、まず小さくて軽いことに驚く。レンズ無しの状態で、バッテリーとメモリーカードを入れたときの重さは約355g。これはXシリーズ最軽量らしい。サイズは、111.9(幅)×66.6(高さ)×38(奥行)mmと小柄で、アウターのポケットにもすっぽり入るサイズだ。
それもそのはず、このカメラは2013年に発売された「X-M1」の後継機。11年ぶりの復活となる「X-M」シリーズの小型軽量というコンセプトを受け継ぎ、電子ビューファイダー(EVF)やボディ内手ブレ補正、内蔵ストロボを省略したつくりとなっている。その基本姿勢を邪魔せずにいい絵を求めた結果、映像素子は有効約2610万画素のAPS-Cサイズ「X-Tans CMOS 4」、画像処理エンジンは最新の「X-Processor 5」を搭載。キビキビと機動力のある設計は、いい意味でどこか軽自動車のようだ。
全体的な見た目はクラシカルな印象で、所有欲を満たしてくれる心地よいデザイン。上部の右側にシャッターボタンなどを固め、左側は〈フジフイルム〉らしいフィルムシュミレーションを配置。一方で背面はシンプルに、バリアングル式のタッチパネル搭載モニターやフォーカスレバーを備えたつくりで、使い勝手も申し分ないといえる。
いざ撮影するときは、最新の被写体検出AFを備えているので、カメラに身を委ねて撮影可能。背面パネルをタッチすることで、フォーカスを合わせ、その撮影まで終えることもできる。また、魅力的なのが、フィルムの経験で培った〈フジフイルム〉らしいフィルムシュミレーションという機能だ。「PROVIA/スタンダード」「クラシッククローム」「クラシックネガ」「ACROS」など、20種類から選ぶことができ、簡単に変更することもできる。RAW現像で凝るもよし、フィルムの持つ特徴を思いっきり楽しんでもよし。こんなところが、〈フジフイルム〉のカメラのよいところなんだ。
たまたまかもしれないけれど、ここ最近、なぜか撮影で〈フジフイルム〉のデジタルカメラをよく見かけた。中盤だったり、小型だったりとサイズはさまざまで、どれも質感は異なりながらもいい写真があがってくる。その秘密を常々知りたいと思っていた。そこで、内藤さんのアメリカ出張に持参してもらい、写真を撮ってきてもらった。それがこれから掲載する写真たちだ。暗部も潰れず、いいなと素直に思える。
一緒に渡したレンズは、ズームキットレンズ「フジノンレンズ XC15-45mm F3.5-5.6 OIS PZ」と、単焦点のパンケーキレンズ「フジノンレンズ XF27mmF2.8 R WR」の二つ。特に後者はこのカメラのためにつくられたかのようにしっくりくるサイズ感が魅力だ。
ちなみにこのカメラ、動画性能もなかなかのもの。最大6.2K、29.97pのフレームレートで4:2:2 10bitの映像記録にも対応と、エントリー機としては十分なくらいだ。それを考えてかヘッドホン端子とマイク端子の両方がある。内蔵マイクも3つあり、4つの指向性から選択もできる。いまの時代らしく、ショート動画向けの「9:16ショート動画モード」という1080pの縦動画用の撮影モードもあり、いたれり尽くせりといえるだろう。
弱点のひとつは、ボディ内手ぶれ補正がないこと。だけれども、デジタル手ぶれ補正をオンにすることで、十分な安定性を得ることもできる。Vlogなんかを撮りたいひとは、ジンバルをプラスすることで、より気にせずに使うことができるはずだ。
ファインダーや内蔵フラッシュもないじゃん!なんてツッコミたくなるひともいるだろうけど、買えないでお馴染みの〈リコー〉の「GR3」だってないですから。それに、ここをあえてなくした割り切ったコンセプトがこのカメラのよさ。その分、コンパクトカメラぐらいの取り回しのよさでどこにでも持ち運べて、レンズ交換ができて、動画だって撮れてしまう。そして、スマートフォンよりも写真に自分の意図がしっかりと込められる。これから写真を始めたいひとや、サブ機が欲しいひと、もしくは重たい一眼を持ち運ぶのが面倒になったひとには、最高の1台となるかもしれない。もちろん、内藤さんのように海外に行くひとや、子どもができたばかりのひとなんて手放せないだろう。
そうそう、「最高ですね、欲しくなっちゃいました」なんて内藤さんから感想を言われたけれど、そりゃあなたが教えてくれたんだから買って使い倒してくださいね。