スタイルの履歴書 斎藤久夫 #15

Text:Kenichi Aono

Edit:Yusuke Suzuki

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ファッションでも音楽でもスポーツでも、どんなジャンルもその人にしか出せないスタイルがある。“Style is Everything”。そう、だれかが言った、スタイルがすべて。『スタイルの履歴書』は、文字通りスタイルのある大人へのインタビュー連載。毎週月・水・金曜更新で、第1回目は〈TUBE〉の斎藤久夫さんをゲストに迎えて。

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15. 会社を縮小し、自分にしかできないことを。

 6年半ほど〈MEN’S BIGI〉の仕事をやっているあいだ、自分の会社は〈His TUBE〉のLポケットのパンツがよく売れて業績はよかった。過去何度か潰れそうな時期もあったけど、その都度どうにか乗り切れましたね。

 働いている人たちは会社を大きくしたいと考えていたけど、俺は「考えさせてくれ」と。出した結論は「会社を小さくしたい」。スタッフに就職先を紹介して会社をシュリンクさせました。2000年頃のことです。

 全国にあるセレクトショップは「マス+インポート」という構成ですよね。でも自分はそこが作らない服をつくりたい。売上のメインとなるマスの部分は自分たちでつくってください、俺は枝葉や新芽となるような服をつくるんで、ということです。これをやるには会社の規模を小さくする必要があった。「後ろ向きなのかな」と考えることもあったけど、今の規模感はちょうどいい。「もう無駄にたくさんの服はつくりたくない」という気持ちもあるし。服に長く関わってきたけど、やっぱり服はつくるより買って着る方が楽しい。これはずっと変わらないな。

 うちはホームページもないしSNSもやらない。時代に完全に置いていかれてます。そんな俺が言うのも何だけど、現在のアパレルはド定番の企画はAIやチャットGPTにやらせた方が絶対精度が高い。でもそれらが絶対に勝てないのはセンスや勇気、行動力。それを磨いていかないといけないんじゃないかな。

  • 40年以上続く“おやじ会”。垂水ゲンさん(聖林公司)がボス、秦義一郎さん(マガジンハウス)、斎藤さん、吉田克幸さん(ポータークラシック)、重松さん、設楽さんと錚々たるメンバー。斎藤さんいわく「おやじ会に感謝」。

    40年以上続く“おやじ会”。垂水ゲンさん(聖林公司)がボス、秦義一郎さん(マガジンハウス)、斎藤さん、吉田克幸さん(ポータークラシック)、重松さん、設楽さんと錚々たるメンバー。斎藤さんいわく「おやじ会に感謝」。

Profile

斎藤久夫(チューブ・デザイナー)

1945年、東京都本郷出身。自身のブランドである〈チューブ(TUBE)〉のデザイナーであり、大手セレクトショップやブランドのアドバイザリー、ディレクター業務を歴任。