加藤忠幸の脳内インデックス。
<す>ステッカー

加藤忠幸の脳内インデックス。<br><す>ステッカー 加藤忠幸の脳内インデックス。<br><す>ステッカー

Photo: Tadayuki Kato

Text: Yusuke Suzuki

Edit: Yusuke Suzuki

COLUMN

人間の三大欲求といえば、食欲・睡眠欲・性欲が一般的。だけど、ビームスのバイヤーであり、〈SSZ〉のディレクターであり、「加藤農園」の4代目でもある加藤忠幸さんにとって、ちょっと大げさだけど物欲が人生の大きな生きがい。加藤さんが夢中になるものやその背景にあるストーリーを知ることは、あなたの人生のなにかのヒントになるハズ。そんな加藤さんの脳内をちょっと覗かせてもらうように、連載では毎回ひとつのキーワードを索引(インデックス)。第8回目は「す=ステッカー」。

ステッカーと侮るなかれ。

フイナム
フイナム

唐突ですけど、加藤さんって持ちものにステッカー貼りますか?

加藤
加藤

あんま、っていうかほとんど貼らないですね。ステッカーってもの自体はカッコいいんだけど、めちゃくちゃ(貼り方に)センスが出ちゃうじゃないですか?

フイナム
フイナム

なにを貼るかの先にある、どう貼るかって大きな問題がありますよね。スマホはどうですか?

加藤
加藤

オレ、恥ずかしいから貼らないです。前はここ(※スマホケースの裏がクリアになった部分)に自分が作った(SSZの)ステッカーとか入れたりしていたんだけど、それもなんかなーみたいな(笑)。

やっぱステッカーチューンでカッコいいなって思うのは、スケーターのひとたちの感覚。前に仕事で〈デラックス(DELUXE)※サンフランシスコ発のスケートカンパニー〉の倉庫に行っていたとき、(訪れたひとが)挨拶代わりにステッカーを貼っていて、“あのスケーターが来ていたんだ” “ここにこんな感じで貼るんだ”みたいなのを見れるのが、すごく楽しくくて。

  • 加藤さんのスマホの写真フォルダに残っている〈デッラクス〉の倉庫に貼ってあったステッカーの数々。ステッカーの貼り方の無限の可能性と、スケーターでありアメリカらしい自由なクリエイションを感じるのに十分すぎるもの。
  • 加藤さんのスマホの写真フォルダに残っている〈デッラクス〉の倉庫に貼ってあったステッカーの数々。ステッカーの貼り方の無限の可能性と、スケーターでありアメリカらしい自由なクリエイションを感じるのに十分すぎるもの。

加藤さんのスマホの写真フォルダに残っている〈デッラクス〉の倉庫に貼ってあったステッカーの数々。ステッカーの貼り方の無限の可能性と、スケーターでありアメリカらしい自由なクリエイションを感じるのに十分すぎるもの。

フイナム
フイナム

貼ったひとのそこにいた空気や痕跡が残るのは上がりますよね。

加藤
加藤

〈スピットファイア(SPITFIRE)※デラックスが運営するBIGHEADがアイコンのウィールメーカー。Supremeの2026SSシーズンでのコラボも話題に)〉のステッカーをカットしてコラージュみたく貼っているひととかもいて、ああいうのめちゃくちゃセンスいいなって思いますよね。

やっぱり定期的に新しいステッカーを出し続けていてカッコいいのは〈シュプリーム(Supreme)〉じゃないですか? 服も作るけど、ずーっとステッカーも作っていて。〈アンタイヒーロー(ANTI HERO)※泣く子も黙るジュリアン・ストレンジャーを総帥とするハーコースケートブランド〉とか〈スピットファイア〉は服のタグに(ステッカーを)付けるじゃないですか? 今ってそういうの無くなっちゃってるじゃん?? 〈アンタイヒーロー〉なんて、ずーーーーっと鳩とかイーグル(のステッカーを)付けてるじゃん。

フイナム
フイナム

日本だと〈バウンティ ハンター(BOUNTY HUNTER)〉もですよね。

加藤
加藤

たしかに! そういうスタンスってめちゃくちゃカッコいいですよね。〈シーイー(C.E)〉のステッカーも、めちゃくちゃプリントのレベルとか高くてカッコいいし。

フイナム
フイナム

ステッカーを作る側とそれを受け取る側、どちらも姿勢を問われますよね。超カッコいいステッカーも、貼り方ひとつでダサくしてしまう可能性があって、なにをどこに貼るかは知性も試されている感じで。

加藤
加藤

本当にそう! ステッカーってデザインだけじゃなく、そういうところが重要なんだと思います。“1枚貼ったらそのあとどうするの?”とか、“貼ってダサくなっちゃって、だったらなにも貼らない方がよかったじゃん!”とかありますよね。コンセプトとかスタイルとか(本質を)わかっていないと貼れないですよ。一歩間違えたら、相当ダサいことになっちゃうんで。

  • 「クオリティが最強」と唸る〈シーイー(C.E)〉のステッカーは、デザイン・インクの乗り方・厚さなどなど、“神は細部に宿る”という言葉がふさわしいこだわりっぷり。ソフビと同じかそれ以上に市場でお目にかかれないBEMONのステッカーは、加藤さんにとってはアート作品そのもの。
  • 「クオリティが最強」と唸る〈シーイー(C.E)〉のステッカーは、デザイン・インクの乗り方・厚さなどなど、“神は細部に宿る”という言葉がふさわしいこだわりっぷり。ソフビと同じかそれ以上に市場でお目にかかれないBEMONのステッカーは、加藤さんにとってはアート作品そのもの。

「クオリティが最強」と唸る〈シーイー(C.E)〉のステッカーは、デザイン・インクの乗り方・厚さなどなど、“神は細部に宿る”という言葉がふさわしいこだわりっぷり。ソフビと同じかそれ以上に市場でお目にかかれないBEMONのステッカーは、加藤さんにとってはアート作品そのもの。

フイナム
フイナム

だれかからいただいたり、値段が安かったりするからラフに捉えられたりするけど、本質はめちゃくちゃ敷居が高い的な。

加藤
加藤

めちゃくちゃ(敷居が)高いよね。よくお店とかの雰囲気作りで“ステッカーをバーって貼って”みたいな話になるけど、それってレベルが高い話だなと思っていて。

だから見てもらえるとわかると思うんだけど、「ビームス 原宿」の〈SSZ〉のコーナーって、あんまりステッカーが無いんですよ。しかも〈SSZ〉のコーナーは、(ステッカーを)カラーコピーしてシートでパウチしてそれっぽくディスプレイに使ったりしています。1、2枚しか持っていないステッカーとか、こわくて貼れないですよ。“おまえ貼れよ!!”って感じですよね(苦笑)。

フイナム
フイナム

なかなかレアなのは貼れないですよね。超レアなやつを貼っているひとを見ると“それ貼っちゃうんですか、すごい!”みたくならないですか? 自分は1枚しか持っていないステッカーとか、もったいなくて絶対に貼れないんですよ。

加藤
加藤

自分も基本的にコレクター気質で貼るのがもったいないから、(自宅の)廊下にピンで貼ったりしちゃってるんだから(笑)。

フイナム
フイナム

裏紙剥がさずピン留め(笑)。

加藤
加藤

だから大量にもらえたときとか、めちゃくちゃ上がるんだよね(笑)。TIE ONE(※サンフランシスコを拠点にしたグラフィティライター。わずか18歳で亡くなってしまった後も、世界中のライターからリスペクトされ続ける存在)やBEMON(※双頭巨人や公害怪獣などで人気のソフビブランド)のステッカーなんかは、もったいなさすぎて額に入れてますよ。

  • 貼るのがもったいなく、ステッカーをカラーコピーしてパウチした自作のブートもの。部屋の壁には貼らず、ビニール袋に入れて飾るスタイルという点からも、加藤さんのステッカーに対する愛情と背筋が伸びるような姿勢が窺えます。
  • 貼るのがもったいなく、ステッカーをカラーコピーしてパウチした自作のブートもの。部屋の壁には貼らず、ビニール袋に入れて飾るスタイルという点からも、加藤さんのステッカーに対する愛情と背筋が伸びるような姿勢が窺えます。
  • 貼るのがもったいなく、ステッカーをカラーコピーしてパウチした自作のブートもの。部屋の壁には貼らず、ビニール袋に入れて飾るスタイルという点からも、加藤さんのステッカーに対する愛情と背筋が伸びるような姿勢が窺えます。

貼るのがもったいなく、ステッカーをカラーコピーしてパウチした自作のブートもの。部屋の壁には貼らず、ビニール袋に入れて飾るスタイルという点からも、加藤さんのステッカーに対する愛情と背筋が伸びるような姿勢が窺えます。

作るひと以上も以下も無し。

フイナム
フイナム

自分は不勉強なのでアレですが、ステッカーってアメリカ製がクオリティ高い説みたいなのがあるじゃないですか? アメリカのステッカーは匂いが違うとかよく聞きますし。

加藤
加藤

CBくん(※原宿のスケートショップ「HESHDAWGZ」を運営する石井洋介さんの愛称)のツテで行ったんだけど、サンフランシスコの雑居ビルの中に「シルバーライン プリプレス(Silverline Prepress)」ってオーナーのドウェインさんがコツコツとステッカーを作っている場所があったんです。機械がブワーっていっぱいあって。

ドウェインさんは『スラッシャー マガジン(THRASHER MAGAZINE)※世界中のスケーターにとっての教科書であり聖書であり憧れの雑誌』にも載るぐらいのバリバリのスケーターで、CBくんは300枚ステッカーを頼むんだけど、その倍の倍ぐらいのサンプルや工場に置いてあるステッカーを貰ってて。“ヤバいなぁ”といつも感じていたんだけど、「シルバーライン プリプレス」はかなりのブランドのステッカーを当時作ってました。

自分も何回か作ってもらい、かなりクオリティの高いステッカーの上がりでしたね。最後は3万渡してお願いしていたんだけど、ドウェインさん、ステッカー作りを辞めてしまったんですよ。

フイナム
フイナム

もう「シルバーライン プリプレス」はないんですね。

加藤
加藤

〈デッラクス〉まわりのスケートブランドから〈エフティーシー(FTC)〉やマックス・シャーフ(※オークランドを拠点にするプロスケートボーダーでありバイクビルダー)の〈4Q コンディショニング(4Q CONDITIONING)〉、あとは〈ナイキ(NIKE)〉から〈アディダス(adidas)〉から色々やってましたね。

フイナム
フイナム

えっ、そんな大きな企業案件もやっていたんですか!?

加藤
加藤

そうそう。“こんなちっちぇえところでやってんの??”って感じでしたよ(笑)。

  • CBさんが1998年にサンフランシスコでスタートしたスケートブランド〈フォーサイト(4SIGHT)〉のステッカーもジップロックに入れて保管。〈ストレンジラブ スケートボード(STRANGELOVE SKATEBOARDS)〉はショーン・クライヴァーが立ち上げたサンフランシスコ発のスケートブランドで、こちらのステッカーは最近手に入れたもの。
  • CBさんが1998年にサンフランシスコでスタートしたスケートブランド〈フォーサイト(4SIGHT)〉のステッカーもジップロックに入れて保管。〈ストレンジラブ スケートボード(STRANGELOVE SKATEBOARDS)〉はショーン・クライヴァーが立ち上げたサンフランシスコ発のスケートブランドで、こちらのステッカーは最近手に入れたもの。

CBさんが1998年にサンフランシスコでスタートしたスケートブランド〈フォーサイト(4SIGHT)〉のステッカーもジップロックに入れて保管。〈ストレンジラブ スケートボード(STRANGELOVE SKATEBOARDS)〉はショーン・クライヴァーが立ち上げたサンフランシスコ発のスケートブランドで、こちらのステッカーは最近手に入れたもの。

フイナム
フイナム

それだけたくさんのオーダーがあった事実が、「シルバーライン プリプレス」への信頼度の高さを証明していますね。

加藤
加藤

オレも何回か行くようになってから〈ビームス〉のステッカーをお願いするようになって、やっぱりめちゃくちゃインクの乗り方がよかったりクオリティが高かったですね。なんて言ったらいいんだろう…。パキッとしていて、もうひと目で違うんですよね。あと、スケートとかサーフとかって、UV加工的なのも大事じゃないですか? そこのケアも完璧だったんですよ。

フイナム
フイナム

メイド・イン・アメリカというより、メイド・イン・サンフランシスコ。

加藤
加藤

自分がステッカーを作るってなったら、自分で刷って作るのとかも悪くはないと思うんだけど、もし今も「シルバーライン プリプレス」があったらお願いしたかったですね。

  • もらってきたミスプリントステッカーの一部。裁断前の感じがかなり好みで、試しプリントの重なり具合などはB品ならではのグッとくるポイント。ちなみに加藤さんのコレクションは1〜3軍に分けられていて、金魚鉢に入っているのはめでたく1軍入りしたステッカーたち。
  • もらってきたミスプリントステッカーの一部。裁断前の感じがかなり好みで、試しプリントの重なり具合などはB品ならではのグッとくるポイント。ちなみに加藤さんのコレクションは1〜3軍に分けられていて、金魚鉢に入っているのはめでたく1軍入りしたステッカーたち。

もらってきたミスプリントステッカーの一部。裁断前の感じがかなり好みで、試しプリントの重なり具合などはB品ならではのグッとくるポイント。ちなみに加藤さんのコレクションは1〜3軍に分けられていて、金魚鉢に入っているのはめでたく1軍入りしたステッカーたち。

フイナム
フイナム

ドウェインさんはどんな方だったんですか?

加藤
加藤

めちゃくちゃスケートが上手いんだよね。プラス、チャリンコも好きで。

フイナム
フイナム

いくつくらいの方なんですか?

加藤
加藤

いくつなんだろう…。オレよりかは歳上だと思う。っていうかね、「シルバーライン プリプレス」は2人しかいなくて。ドウェインさんともうひとりだけ。

フイナム
フイナム

ヤバいですね(笑)。

加藤
加藤

それで行ったら帰るときに“これ持っていけよ!”な感じで、B品のステッカーを大量にシートとかでくれて。

フイナム
フイナム

B品、アツすぎます! ミスプリとかですか?

加藤
加藤

そう! こんなにもらっちゃっていいのかなーみたいな感じで、バックパックにパンパンに詰めこんで帰ってましたよ。いいひとだったから、たぶん、(あまりお金を受け取ったりせず)ぎりぎりで仕事を回してたんだろうな。

加藤忠幸

BEAMSバイヤー / SSZディレクター

1973年生まれ・神奈川県出身。大学卒業後にビームスに入社し、2012年よりSURF&SK8部門のバイヤーに。2017年には自身のブランドである〈SSZ〉をローンチ。加藤農園の4代目として鎌倉で野菜を育て、4日に1度は市場で販売も行う。鎌倉で「LANE BY」を運営したり、2026年4月には『I AM BEAMS』シリーズから『KATO』も出版。

@katoyasai

@brochure_official

@lane_by_