ブンがいざなう読書のラビリンス。一冊目
どんなことがあっても離れないから。と自分以外の人間に伝えることができるだろうか。分離を許されないのは自分自身以外にあり得るのだろうか。私はひとりだけれど独りではないよ、そうだよきっと大丈夫。まだ生きているんじゃないかな。
明るすぎる夜に出会った。大きな池にまばらに置かれた桜の花。街灯の灯りが不器用に桜を照らし鼻を素早く抜ける爽やかな香りとともに春の趣を運んでくる。日々、ふわりふわりと過ぎて行く時間のなかで、私がどこにいるのかを考えることが多くある。私はいま、井の頭公園にいる。膝の上にはチグハグな付箋が貼られた辞書と手帳、返信用のレターセットがあふれそうに積み上げられている。ふう… ずっと濃いため息、物思いに耽ったような顔で景色に集中する。新しく購入したイヤホンがすこぶるいい、きっとこれが高性能。ノイズキャンセリングを信じていなかった私が、驚く瞬間がやっときた。世界のすべての音を遮断し、流れるのはテリー・キャリアー。寂しさを隠すように手帳の日付を一日一日埋めていく。空白を強く触り、記憶を遡る。