HANG OUT VOL.4

SOMETHING HAPPENSON THE SNOWY MOUNTAIN.

Chapter 02

2024.12.11

Edit:Yuri Sudo

HANG OUT VOL.4

HANG OUT VOL.4
SOMETHING HAPPENSON THE SNOWY MOUNTAIN.

冬は雪山映画でしょ。

新しい季節がくると観たくなる映画がある。春は『四月物語』、夏は『菊次郎の夏』、秋は『オータムインニューヨーク』。冬なら雪山映画がいい。雪山ではラブやサスペンスが起こるし、美しい景色は心洗われる。そんなわけでこんな5つ。

Chapter 02 | SOMETHING HAPPENSON THE SNOWY MOUNTAIN.

NO.1
『女王陛下の007』
(1969)

恋愛度:★★★★<br>
スリリング度:★★★★★<br>
極寒度:★★<br>
スキー度:★★★★

恋愛度:★★★★
スリリング度:★★★★★
極寒度:★★
スキー度:★★★★

恋して、滑って、助けて。
雪山舞台の異色の007。

シリーズのなかでも、今作はある意味、“伝説的な”作品と言える。

それまでジェームズ・ボンドを演じたショーン・コネリーは前作『007は二度死ぬ』で引退し、今作は演技経験のないジョージ・レーゼンビーへとバトンタッチした。しかし、ショーン・コネリーがつくりあげたボンド像は強固なもので、レーベンビーは製作最中に今作限りで降板することを発表したそう。だから1回ぽっきりのジェームズ・ボンドってわけ。当時興行収入もそれほど振るわずだったが、のちに名だたるクリエイターたちがオマージュしたりと、後世に評価があがった特殊な例である。

何よりも見所は圧巻のスキーシーン。スパイとなったボンドが、黒幕であるブロフェルドを追いかけて辿り着いたのはスイスの雪山。もちろんバレて逃亡を企てるのだが、そのときに雪山をスキーで下っていく。それも足捌き軽やかに、見事な弧を描きながら。聞けば納得、レーゼンビーは若い頃スキーのインストラクターをしたり競技に出るほどの腕前だったのだとか。

チープなCGはご愛嬌だが、シリーズお決まりの派手なアクションや演出は健在で、舞台が雪山であることによってまた違った魅力の007に仕上がっている。スイスのクリスマスマーケットもチラリと映り、冬映画の要素は十二分にある。ぜひパートナーや友達とハラハラしながら観てほしい。

『女王陛下の007』

犯罪組織スペクターの黒幕ブロフェルドの探索の任が、ボンドに与えられる。そんな彼の前にトレーシーという名の美女が現れ、物語が動いていく。ボンドはブロフェルドの本拠地に単身潜入するも、恐るべき人類抹殺計画を企てていることを知る。陰謀を阻止すべく奇襲作戦を仕掛けるが…。

1969年製作/ピーター・ハント/130分/イギリス

©️Everett Collection/amanaimages

©️Allstar/amanaimages(banner photo)

NO.2
『ヘイトフル・エイト』
(2015)

恋愛度:-<br>
スリリング度:★★★★★<br>
極寒度:★★★★★<br>
裏切り度:★★★★★

恋愛度:-
スリリング度:★★★★★
極寒度:★★★★★
裏切り度:★★★★★

雪と嘘が積もり積もって、
壮絶なラストへ。

驚かないでほしいのは、この映画は168分という尺にもかかわらず、その8割が山小屋のなかだということ。それでも飽きさせないのはタランティーノの手腕としか言いようがないし、第88回アカデミー賞にて3部門ノミネートした事実がその証明である。

舞台となる山小屋に集まったのは、素性のわからない8人の男女。ある殺人事件をきっかけに、互いの腹の底を探り合うわけだが、嘘が嘘を呼びあらぬ結末を迎える。山小屋では躊躇なく銃撃戦が行われ、血肉が飛び散り、密室ゆえに生臭さが画面から伝わってくる。お世辞にも気持ちのいい映画とは言えないが、その一方、雪原に赤い血が流れる絵はいやにきれい。物語に加えて、そんな鮮烈な映像にも注目してほしい。

だれが嘘をついているのかと観客も疑いつづける辛い映画であるが、ただひとつ…。登場人物の一人がぽつりと呟いた「クリスマスは家族と過ごすタイプなんだ」という言葉だけは真実であってほしいと願いたい。

『ヘイトフル・エイト』

大雪で小さな山小屋にて足止めを食らった、わけありの男女8人。ひとつの殺人事件をきっかけに、嘘で塗り固められた彼らの言動が物語を狂わせていき、それぞれの素性があぶりだされていく。一晩を過ごすなかで明らかになった真相とは…。

2015年製作/クエンティン・タランティーノ/168分/アメリカ

©️Capital Pictures/amanaimages

NO.3
『私をスキーに連れてって』
(1987)

恋愛度:★★★★★<br>
スリリング度:★★★<br>
極寒度:★<br>
スキー度:★★★★★

恋愛度:★★★★★
スリリング度:★★★
極寒度:★
スキー度:★★★★★

若者のバイブルであり、
スキーをファッションに昇華した一作。

雪山映画と聞いて、いちばんに挙がるのは間違いなくこの作品。「ホイチョイ・プロダクションズ」製作で、原田知世と三上博史が主演を務めた、恋愛と青春とスキーを見事に掛け合わせた名作『私をスキーに連れてって』である。

映画としてのおもしろさ、テンポの良さに加え、やはりスキーのHOW TOをやってのけたのは、ホイチョイ・プロダクションズだからこそ。冒頭で、三上博史演じる文男含め、同級生たちがさまざまな滑り方を見せてくれる。その軽快なことこの上ないし、純粋にこんな風に滑ってみたいと思うのだ。

ちなみに、ホイチョイ・プロダクションズは過去に『不倫の流儀』『東京いい店やれる店』という著作を出版しているが、いずれも一見ばかばかしいテーマを、真面目に扱う教則本。今作にも通ずる部分がある。

話を戻して、わたスキ。作中に出てくる小道具たちも忘れてはならない。登場人物たちが乗っている「トヨタ セリカ“GT-FOUR”」は、1986年に発売されたトヨタ初のベベルギア式フルタイム4WD。広告で “流面形” と表現されていたそのフォルムは、前から後ろまでフラットでスタイリッシュ。この車のおかげで、「スキーは四駆」というすり込みがなされた。

さらに、携帯電話が一般的ではなかった時代ということもあり、劇中で登場したアマチュア無線機も注目された。雪山での通信手段として使われていて、今作をきっかけに資格をとりはじめたひともいるほどだとか。

こうして改めて見ると、今作はスキーというレジャーの方程式を示しただけではなく、スキーをスポーツからファッションに押し上げた作品とも言える。令和のいま、スキーは「余裕のあるひとがやるスポーツ」に戻りつつあるけれど、わたスキを観て、雪山にカジュアルに訪れるひとが増えてほしいものだ。

『私をスキーに連れてって』

大学時代はスキー選手として活躍するも、社会人になり商社に勤める恋愛下手なサラリーマン・文男。クリスマスイブに友人とゲレンデを訪れた彼は、OLの優と出会い、一目惚れをする。年末年始の万座で想いを打ち明け、付き合い始める二人だが、文男が仕事で会えない日が続く。迎えたバレンタイン・デー、志賀高原と万座で起こった出来事とは…。

1987年製作/馬場康夫/98分/日本

NO.4
『フレンチアルプスで起きたこと』
(2014)

恋愛度:★<br>
スリリング度:★★★★<br>
極寒度:★★★<br>
スキー度:★★★★

恋愛度:★
スリリング度:★★★★
極寒度:★★★
スキー度:★★★★

大自然を前に本性はでる。

自然のなかで、人間は本来の姿に戻る。編集部の山を登るスタッフはたびたびこんなことを言うし、この映画を観てもそれを甚く感じる。

フランスに5日間のスキー・バカンスにやってきた4人家族。冒頭、4人揃ってゆったりと雪山を滑っていくさまは、まるでこの家族の豊かさを表しているようでもあるし、このあとに起こる事件への予兆にも思える。

2日目を迎え、レストランのテラス席にて昼食をとる4人。すると目の前で雪崩が発生。テラス全体がホワイトアウトし、一時騒然となる。幸い大きな被害はなかったものの、その時にとった父親の行動が後に波紋を呼ぶ。妻の疑心に、子供たちの葛藤、家族の関係性が変わってしまい、父親はどう立ち回るのか。

逃げ場のない大自然のなかでは、人間のちっぽけさや強さが浮き彫りになる。オーケストラの壮大な音楽がそれを煽り、胃がキリキリとする時間がつづくことだろう。心の準備をしてご覧ください。

『フレンチアルプスで起きたこと』

フランスの高級リゾートに、5日間のスキー・バカンスにやってきたスウェーデン人一家。しかし、昼食をとっている最中、目の前で雪崩が発生。幸い大事には至らなかったが、その時にとった父親の行動が家族の関係を崩壊させていく。残されたバカンスの時間の中で、妻と子供たちの信頼を取り戻そうとするが…。

2014年製作/リューベン・オストルンド/118分/スウェーデン・デンマーク・フランス・ノルウェー

©️Fredrik Wenzel

NO.5
『クリスマスのその夜に。』
(2010)

恋愛度:★★★<br>
スリリング度:★<br>
極寒度:★★<br>
クリスマス度:★★★★★

恋愛度:★★★
スリリング度:★
極寒度:★★
クリスマス度:★★★★★

クリスマスの正解はひとつじゃない。

「クリぼっち」という言葉ができたのはここ数年の話。一人ぼっちでクリスマスを過ごすひとのことを指した言葉で、なんと寂しい五文字だろうか。ただ安心してほしい。そんなひとにこそ今作をおすすめしたい。

ノルウェーの小さな町を舞台に、あるクリスマス・イヴの町の人々を描いたオムニバス風の作品。だけれど、こういったイベントごとを扱った作品特有のハッピー全開ムードは一切ない。どれも普通じゃないイヴなのだ。

サンタに変装してかつての家に潜り込む奴がいれば、訳ありカップルの出産を手助けする奴がいて、不倫関係にある男女が運命の日を迎える。きっと観賞後に、家族やパートナーとの関係性を猛省するだろう。その一方で、必ずしも皆が幸せなクリスマスを過ごしているわけではない、とクリぼっちが肯定された気持ちになる。そんなあたたかい映画なのだ。北欧らしいクリスマス風景も見られるから、ラストカットまでぜひ観てほしい。

『クリスマスのその夜に』

ノルウェーのとある小さな町の、クリスマス・イヴの群像劇。ある男は結婚に破綻したが、それでも子供にプレゼントをあげたいとサンタに変装して、かつての家に潜り込む。ある少年は、家から抜け出しクリスマスを祝わないイスラム教の女の子と過ごす。ある医師の男は、故郷に戻れないコソボ出身のカップルの出産を手助けする。同じイヴに起こった複数の出来事が交差し、最後には…。

2010年製作/ベント・ハーメル/85分/ノルウェー・ドイツ・スウェーデン

©️Alamy/amanaimages

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