シリーズのなかでも、今作はある意味、“伝説的な”作品と言える。
それまでジェームズ・ボンドを演じたショーン・コネリーは前作『007は二度死ぬ』で引退し、今作は演技経験のないジョージ・レーゼンビーへとバトンタッチした。しかし、ショーン・コネリーがつくりあげたボンド像は強固なもので、レーベンビーは製作最中に今作限りで降板することを発表したそう。だから1回ぽっきりのジェームズ・ボンドってわけ。当時興行収入もそれほど振るわずだったが、のちに名だたるクリエイターたちがオマージュしたりと、後世に評価があがった特殊な例である。
何よりも見所は圧巻のスキーシーン。スパイとなったボンドが、黒幕であるブロフェルドを追いかけて辿り着いたのはスイスの雪山。もちろんバレて逃亡を企てるのだが、そのときに雪山をスキーで下っていく。それも足捌き軽やかに、見事な弧を描きながら。聞けば納得、レーゼンビーは若い頃スキーのインストラクターをしたり競技に出るほどの腕前だったのだとか。
チープなCGはご愛嬌だが、シリーズお決まりの派手なアクションや演出は健在で、舞台が雪山であることによってまた違った魅力の007に仕上がっている。スイスのクリスマスマーケットもチラリと映り、冬映画の要素は十二分にある。ぜひパートナーや友達とハラハラしながら観てほしい。